スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

2020-01-01から1年間の記事一覧

労働者に有利な日本の労働法を徹底活用する

労働法の専門家である、大内伸哉氏が、『会社員が消える』(文春新書、2019年)という刺激的なタイトルの本を出している。そして、これからはプロ人材あるいはスペシャリスト人材にならなければいけないことが提言されている。今後、AIやロボットが導入され…

在宅勤務は国際業務の生産性を上げる

在宅勤務のメリットは時差を克服することだといえる。今まで、日本時間の朝9時から夕方5時までの時間帯でしか国際電話ができなかったと考えると、大きな制限といえる。おそらく、夜遅くまでオフィスに残る、あるいは朝早く出社するなど工夫をしていたと思う…

コロナ禍は労働者が幸せを追求するチャンス

布留川正博『奴隷船の世界史』(岩波新書、2019年)によると、奴隷船の船長は、奴隷の年齢や肌の色つや価格などを慎重に吟味し、折り合わない場合は取引を拒否した。奴隷の数が増えると奴隷には番号が付けられ、航海日誌にはその特徴が記される。また、奴隷…

幸運を期待しつつニッチ分野を見つけるには

自分の専門とするニッチ分野はどのように選んだらよいのだろうか。基本的に自分が情熱を感じる分野で、学びが心地よいと感じることが望ましい。長く継続学習できるためには好きな分野でなければ続かない。いくつか自分でワクワク感を感じられる分野が見えて…

日本の名刺は専門家を育てるつもりがないことの表明

これから、ジョブ型労働市場になると社会人一人ひとりは、自分は何ができるのか、何が専門なのかレッテルを貼ることになる。みんなそのレッテルをもとに労働市場で仕事を探し、会社はそのレッテルをみながら人材を採用する。すでに、リンクト・イン(LinkedI…

裁判官の文章は悪文のチャンピオン

岩淵悦太郎氏によると悪文のチャンピオンは、頭脳明晰であふれんばかりの教養の持ち主であるはずの裁判官の判決文だそうだ。たしかに、学生時代、判決文を読んでいると理解に苦労することが多かった。とにかくストーリーを追いかけるのが非常に難しい。理解…

論文に格調高い日本語は必要か

論文なので、お粗末な日本語は書けないと思ってしまい、長い文書が短い文章よりも格好いと考えたこともある。今でもそう思うことがあるが、しかし、文章が長くなると首尾一貫しないことが多くなる。文章の出だしと締で辻褄が合わない、つまり、主語と述語が…

論文執筆による日本語力の向上という恩恵

博士論文を含め論文の執筆は、社会人にとって日本語の文章作成能力の向上に大きく貢献する。一度、論文を書き上げた人にとっては、他の一般的なビジネス文書や一般書の執筆などかなり楽になることは間違いない。学術論文と異なり一般の文章では盗作を指摘さ…

理想的な「論文博士」の制度設計

論文博士の制度をもう少し体系的に再構築していくことが、これからの大学院には重要だと思われる。お金がなくてもある一定の努力さえすれば博士号を取得できることにしないと、わが国における教育機会の不平等はどんどん拡大していく。若いころ経済的な理由…

日常業務の中にある研究素材

私の場合、損保会社の保険引受人(アンダーライター)の仕事をしていたとき、ある保険商品がなぜ企業に役立つのかを解説するための論文をマーケティングの一環で書いた。保険商品自体が研究素材になったわけであるが、論文の構成は保険商品の解説というより…

職務給は専門家になるインセンティブ

国際競争にさらされる昨今、これ以上メンバーシップ型を維持するのは、日本企業にとってコストの面でも競争力強化の点でも無理があり、今後はジョブ型に変化していくことになる。なぜなら、少子高齢化で労働人口が増えないなかで、あらゆる年代の層で男女問…

メンバーシップ型からジョブ型へ

濱口佳一郎『若者と労働者』(中公新書ラクレ、2013年)によると、日本型労働市場を「メンバーシップ型」と呼び、欧米型労働市場を「ジョブ型」と呼んでいる。濱口氏の作った造語であるが、双方の労働市場の特徴をよく表している。 日本は「就職」ではなく「…

本当の生涯学習が必要な時代

日本では、子どもの教育には親が責任を持つべきで、親が大学の学費を出してやるという感覚が強い。そして、小中学校から私立の学校に子どもを送れる家庭は、相当な経済力が必要である。私立学校に入学するためには専用の塾に通う必要もあるので、そこでも授…

高等教育への投資が国力の源泉になる

矢野眞和『大学の条件:大衆化と市場化の経済分析』(東京大学出版会、2015年)の分析をもとに、世界各国の高等教育を分類すると、次の四つに分けることができる。①北欧型、②ヨーロッパ大陸型、③アングロサクソン型、④日本型である。 ①の北欧型は学費が無料…

実践に勝るMBA教育はない

アメリカ企業であれば、かならず、職務記述書(job description)が提示され自分の職務が明確化される。外資系企業で働いた経験がある人であれば、いわゆる「ジョブ・ディスクリプション」という表現をよく使うであろうが、自分の職務、役割、責任、権限など…

日本で出番がないビジネススクール

天野郁夫氏によると、問題は法務、経営、金融、会計、管理、行政といった社会科学系の人材養成であり、これらの領域は学部段階でも教育自体が専門職業教育というにはほど遠く、実践性・実用性に欠けているという。そして、専門職大学院の拡充はこの社会科学…

多様性の創出に貢献しない法科大学院

過去を振り返り、法科大学院のために費消した資金を研究者の卵に奨学金として提供していたら、今頃どれだけ優秀な人材を輩出できたかと思うと悔やまれる大学院もあるのではないか。今となっては結果論で取り返しがつかないが、給付型奨学金制度で大学院生を…

アメリカが発明した大学院と学位制度

天野郁夫『大学改革を問い直す』(慶應義塾大学出版会、2013年)によると、実は大学院という制度はアメリカが発明したものだそうだ。そして、学士、修士、博士という三段階学位制度もアメリカ的なものでヨーロッパには2000年以降に浸透し始めたようである。…

専門職大学院は成果を出せるのか

今となっては、経済的事情などにより法科大学院に通えない人のために司法試験予備試験があることによって、司法の職に就くために法科大学院の高額な授業料を支払う必要はないと考える人が増えた。その結果図表の通り、予備試験合格者が増えてその実績をみて…

専門職大学院にはどのような役割があるか

専門職大学院とは大学の世界における単なる呼称ではなく、学校教育法99条2項において「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする…

インド哲学による政治的態度決定

一銭にもならない教養が政治的な態度決定に役立つことがある。たとえば、自分はリベラリストであるとはっきり言える人は、おそらく、寛容で人に優しく、奉仕の精神があるであろう。しかし、このような人的な特性だけでリベラリストであり続けるのは難しい。…

日本の大学のグローバル対応

日本の大学の現状をみると、大学自体がグローバル化の波のおかげで海外の知を取り込む絶好の機会に立ち会っていることがわかる。また、本来のグローバリゼーションの意味はアメリカナイゼーションと同義語ではないということを再認識する必要がある。英語で…

世界最古の大学から学べること

ヨーロッパがアラブから学ぶという時代的背景の中で、ヨーロッパでも生産力が向上して商工業が発展し、さまざまな組合ができた。その中のひとつに教師と学生の組合として形成されたのが本格的な大学である。この辺の背景は、山口裕之『「大学改革」という病…

アラブ世界から多くを学んだヨーロッパ

暗黒時代といわれる中世ヨーロッパにおいては、キリスト教の教会による支配が強く、古代ギリシャやローマの文化が破壊されて、文化的発展ができなかったと考えられている。その間、魔女狩りもあれば、十字軍の遠征による戦争もあり、イメージとしては暗い世…

大学院は社会人に何を提供できるか

1991年の大学審議会答申「大学院の量的整備について」において、「大学院は、大学等の研究者の養成を通じ、わが国の学術研究の発展に大きく寄与してきたが、近年では・・・社会の多様な方面で活躍し得る高度な専門的知識・能力を有する人材が求められており…

旧文部省の大学院改革の狙いは何だったのか

課程博士の最大の問題は大学院生の就職難である。そもそも日本全国の大学にポストもないのに、なぜ大量の博士が生まれたのか。少子化で大学経営も厳しさを増すことが明らかだったにもかかわらず、なぜ多くの人が大学院に進学しだしたのであろうか。 1991年は…

「論文博士」を導入する大学にとってのメリット

たとえば、指導料や審査料に仮に30万円を徴収したとしよう。大学としては30万円程度では利益に貢献しないといえるだろうか。ドイツ型やフランス型の論文博士制度を導入した場合の最大のメリットは、大学が外の知を取り込めることではないかと考える。とくに…

博士号のない教授のための「論文博士」制度

松野弘氏は『サラリーマンのための大学教授の資格』(星雲社、2014年)のなかで、大学教授になるには博士号が必須であり、社会人教授についても博士号の取得を要件とすべきことを提言する。専門的・学術的な教育を受けておらず、博士号はもちろんのこと、修…

日本の高等教育はアメリカの模倣でよいのか

ドイツやフランスに論文博士に類似の制度がありながら、なぜ日本では課程博士が主流になってしまったのであろうか。おそらく、戦後アメリカの高等教育システムを模倣したためであろう。天野郁夫『国立大学・法人化の行方-自立と格差のはざまで』(東信堂、2…

「論文博士」の起源はドイツやフランスか

仕事柄よくドイツの再保険会社の人と面談することがある。名刺交換すると博士号取得者が多いことに気がつく。先方は普通のビジネスパーソンであり学者でもなんでもない。不思議に思っていたが、どうやらドイツには日本の論文博士に類似する制度があるようだ…