スペシャリストの生き方

自分だけの生態学的ニッチで生きる

世界最古の大学から学べること

ヨーロッパがアラブから学ぶという時代的背景の中で、ヨーロッパでも生産力が向上して商工業が発展し、さまざまな組合ができた。その中のひとつに教師と学生の組合として形成されたのが本格的な大学である。この辺の背景は、山口裕之『「大学改革」という病』(明石書店、2017年)に詳しいが、とくに、有名なのが学生の組合としてのイタリア・ボローニャ大学、そして、教師の組合としてのフランス・パリ大学である。

世界最古の大学であるイタリアのボローニャ大学は法学で有名であるが、イタリアがアラブ世界との交易が盛んで、経済の発展に伴い体系的な法学が必要になったことは想像できる。大学ではローマ法の研究が盛んであったということであるが、原書ではなくアラビア語からラテン語への翻訳版をもとに研究された。法学研究で有名になったボローニャ大学にはヨーロッパ各地から学生が集まったが、ボローニャ市民と異なり市民権がなかった。そして、外国からの学生たちは自分たちの学ぶ環境を確保するため市当局と交渉して自治権を獲得していったということである。

また、ボローニャ大学と並んで世界最古の大学とされるパリ大学は神学で有名である。中世の学問はスコラ哲学が教会や修道院の付属の学校(スコラ)で学ばれていたが、パリ大学等ではキリスト教信仰とは別に、古代ギリシャの哲人・アリストテレスを含む哲学が学ばれていた。そして、アラブ世界ではアリストテレスのすべての原典がアラビア語に翻訳されていたおかげで、注釈書なども含めてラテン語に翻訳されパリ大学でもアリストテレスの哲学はよく研究された。しかし、教会にとって数々の不都合が存在していたために禁書になったりしている。また、パリ大学の教師の人事権は教会に握られていたので、教会の支配に対して不満を抱いていた教師たちは自治権を獲得するために教会と戦っている。

この二つの古い大学の歴史的背景から学べることは、比較的自由に外の世界のことを学ぶことができることは学問の発展に重要であること。そして、大学の自治権は学問の自由を獲得することに必須であることである。国家や教会に管理統制されることは財政的な支援を得るメリットと引き換えに学問の自由を失い、真理の探究を遠のかせることになるのであろう。