スペシャリストのすすめ

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教育

法科大学院が法学研究を衰退させるのか

日本の多くの大学で法科大学院(ロースクール)が設立された。制度自体は2004年にはじまっているが、法科大学院に対する懐疑的な意見は多い。しかも、すでに閉鎖した法科大学院の数のほうが、存続している法科大学院の数よりも上回っている。存続している法…

大学院はリモート博士の時代

論文を書くことが多くなり、一般のテーマで文章を書く時間がなくなった。今年から論文博士を断念し、課程博士に切り替えたからである。しかも学ぶ大学院は、横浜在住でありながら神戸である。すなわち、リモート博士である。これは明らかにコロナのおかげと…

昔の大学教授の魅力は人間力

本棚の奥から1992年の「大学院要覧」がでてきた。懐かしい先生の名前もあり、講義内容も説明されており当時の学問の流行も感じられた。そして、当時の先生方の業績はどのようなものだったのかと思い、国立国会図書館のウェブサイトの検索機能で調べてみて気…

「未来への投資」を忘れた日本の高等教育

酒井吉廣「コロナで待ったなし、国立大学の改革を支える自主財源の拡大」金融財政事情72巻3号(2021年)を目にした。昨年、東京大学が大学債を発行したのをきっかけに、大学の独自経営には自主財源の拡大が必要ということである。 世界の大学債は、残高ベー…

人としての能力を奪うIT技術に注意

最近、30年前に書いた修士論文の要約を書く機会があった。30年前の論文は400字詰め原稿用紙に手書きである。幸い、20年前にその手書き論文を業者にお願いして、ワードでタイプしてもらっていたので、ワード原稿で読むことができた。さぞかしひどい論文かと思…

「子どもの教育は親の責任」ではない

日本の大学における財源確保のために大学基金の設立よりも、公共投資として大学への予算配分を大幅に増やすべきだと思う。これは長期的な投資であり、リターンは必ずあるであろう。 図表は過去の大学の初年度納付金の推移を、国立大学と私立大学に分けて比較…

アメリカの大学基金は日本で成功しない

2020年11月27日の日本経済新聞・私の履歴書に元東京大学総長の小宮山宏氏の「信託基金」に関する記事を目にした。ハーバード大学やスタンフォード大学といったアメリカの私立大学では卒業生から寄付を集め、巨額資金によって投資による運用益を得ているとい…

アウトプットを前提にインプット

効果的なインプットを実行したい場合は、アウトプットが前提のほうがよいと思われる。たとえば、本を書く、論文を書く、ブログを書くという前提でインプットすると、漫然と本を読み漁るよりも効率的である。 筆者の場合、論文を書く前提で書籍を読むと、引用…

プレプリントの論文は価値がないのか

プレプリント(preprint)の論文とは査読前論文で、厳格な審査を経ていない論文がインターネット上に掲載されるものである。とくに自然科学の分野などは、時間との勝負がある場合や、実験結果の検証が不十分な段階でもある程度結果に確信が持てる場合は、プ…

「株」「不動産」「投資信託」あるいは「英語」

確実なリターンを得られる投資は何か。株や不動産、投資信託、金、商品先物取引、どれをとっても元本保証はされない投資である。その点、自己投資としての英語は比較的確実な投資といえる。とくに20代の人で300万円あれば、1年でもいいので海外留学するとよ…

「理論と実務を架橋する」実践の難しさ

「理論と実務を架橋する」「理論と実務の橋渡しをする」ということはよくいわれるが、これほど頻繁に聞くにもかかわらず実践が難しいものもない。研究者は学術の世界に安住し、簡単なことを難しい表現で表し、実務家は日々の業務に忙殺されて、日々理論的な…

スペシャリストは複数分野の専門家になる

速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店、2006年)というかなり分厚い本を読んで驚いたことは、著者が経済史と歴史人口学が専門であるということ。感染症や医学の専門家ではない著者が、あれだけ大きな被害をもたらしたスペイン・インフ…

この世界に「独り勝ち」はあり得ない

日本という国は本当に冷たい社会である。貧富の差はどんどん拡大し、お互いのことに対して配慮がなくなってきている。自己責任という言葉で、貧困も本人の責任としてすべて押し付ける。そもそも、多くの富裕層は、日本に貧困層がいることにも気が付いていな…

本当の生涯学習が必要な時代

日本では、子どもの教育には親が責任を持つべきで、親が大学の学費を出してやるという感覚が強い。そして、小中学校から私立の学校に子どもを送れる家庭は、相当な経済力が必要である。私立学校に入学するためには専用の塾に通う必要もあるので、そこでも授…

高等教育への投資が国力の源泉になる

矢野眞和『大学の条件:大衆化と市場化の経済分析』(東京大学出版会、2015年)の分析をもとに、世界各国の高等教育を分類すると、次の四つに分けることができる。①北欧型、②ヨーロッパ大陸型、③アングロサクソン型、④日本型である。 ①の北欧型は学費が無料…

実践に勝るMBA教育はない

アメリカ企業であれば、かならず、職務記述書(job description)が提示され自分の職務が明確化される。外資系企業で働いた経験がある人であれば、いわゆる「ジョブ・ディスクリプション」という表現をよく使うであろうが、自分の職務、役割、責任、権限など…

日本で出番がないビジネススクール

天野郁夫氏によると、問題は法務、経営、金融、会計、管理、行政といった社会科学系の人材養成であり、これらの領域は学部段階でも教育自体が専門職業教育というにはほど遠く、実践性・実用性に欠けているという。そして、専門職大学院の拡充はこの社会科学…

多様性の創出に貢献しない法科大学院

過去を振り返り、法科大学院のために費消した資金を研究者の卵に奨学金として提供していたら、今頃どれだけ優秀な人材を輩出できたかと思うと悔やまれる大学院もあるのではないか。今となっては結果論で取り返しがつかないが、給付型奨学金制度で大学院生を…

アメリカが発明した大学院と学位制度

天野郁夫『大学改革を問い直す』(慶應義塾大学出版会、2013年)によると、実は大学院という制度はアメリカが発明したものだそうだ。そして、学士、修士、博士という三段階学位制度もアメリカ的なものでヨーロッパには2000年以降に浸透し始めたようである。…

専門職大学院は成果を出せるのか

今となっては、経済的事情などにより法科大学院に通えない人のために司法試験予備試験があることによって、司法の職に就くために法科大学院の高額な授業料を支払う必要はないと考える人が増えた。その結果図表の通り、予備試験合格者が増えてその実績をみて…

専門職大学院にはどのような役割があるか

専門職大学院とは大学の世界における単なる呼称ではなく、学校教育法99条2項において「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする…

日本の大学のグローバル対応

日本の大学の現状をみると、大学自体がグローバル化の波のおかげで海外の知を取り込む絶好の機会に立ち会っていることがわかる。また、本来のグローバリゼーションの意味はアメリカナイゼーションと同義語ではないということを再認識する必要がある。英語で…

世界最古の大学から学べること

ヨーロッパがアラブから学ぶという時代的背景の中で、ヨーロッパでも生産力が向上して商工業が発展し、さまざまな組合ができた。その中のひとつに教師と学生の組合として形成されたのが本格的な大学である。この辺の背景は、山口裕之『「大学改革」という病…

アラブ世界から多くを学んだヨーロッパ

暗黒時代といわれる中世ヨーロッパにおいては、キリスト教の教会による支配が強く、古代ギリシャやローマの文化が破壊されて、文化的発展ができなかったと考えられている。その間、魔女狩りもあれば、十字軍の遠征による戦争もあり、イメージとしては暗い世…

大学院は社会人に何を提供できるか

1991年の大学審議会答申「大学院の量的整備について」において、「大学院は、大学等の研究者の養成を通じ、わが国の学術研究の発展に大きく寄与してきたが、近年では・・・社会の多様な方面で活躍し得る高度な専門的知識・能力を有する人材が求められており…

旧文部省の大学院改革の狙いは何だったのか

課程博士の最大の問題は大学院生の就職難である。そもそも日本全国の大学にポストもないのに、なぜ大量の博士が生まれたのか。少子化で大学経営も厳しさを増すことが明らかだったにもかかわらず、なぜ多くの人が大学院に進学しだしたのであろうか。 1991年は…

日本の高等教育はアメリカの模倣でよいのか

ドイツやフランスに論文博士に類似の制度がありながら、なぜ日本では課程博士が主流になってしまったのであろうか。おそらく、戦後アメリカの高等教育システムを模倣したためであろう。天野郁夫『国立大学・法人化の行方-自立と格差のはざまで』(東信堂、2…

会社を大学院として使いこなす

ビジネスにかかわる社会科学系の大学院博士課程で20代の貴重な時間を費やすのは否定的にならざるを得ない。修士課程に関しては考えが定まらないが行ける機会があるのであれば行ってもよいであろう。論文の書き方くらいは学べる。もちろん、行かなくても学べ…