スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

知識やノウハウの面や立体をつくる

長女の大学受験のために読んでいた本で、興味深い記述に接しました。全国個人敏腕塾長会編『地方名門国公立大学合格バイブル』(コスモ21、2022年)によると、点の知識を点で終わらせないことが大切といいます。学んだ点と点をつなげることで線にすることが求められます。そして、その線を面にし、さらには立体にする。

たとえば、「イチゴ」を考えます。イチゴは甘い、で「イチゴ」と「甘い」が線でつながります。イチゴは赤い、で「イチゴ」と「赤い」が、また線でつながります。イチゴは果物で、「イチゴ」と果物が線でつながります。このように知識を線でつなげると、徐々に二次元的な面になってきます。

さらに深い知識で、イチゴは約90%が水分で約10%が糖質、日本で年間20万tの出荷量、糖度は冬季で10.3以上で春季で9.3以上などとなれば、かなり立体的な体系的知識へと変化していきます。

今までは点の知識を大量に蓄積してきましたが、それを線にし、面にし、立体にする技能を軽視してきたそうです。これからはより探求が重視され、総合的な思考能力が問われる時代だということです。

たしかに、そうなのでしょうね。丸暗記の時代は終わり、あるテーマについてどこまで深く考えめぐらせることができるのかが重要に。過去にはある問題で回答が得られなければ、そこで終わりでした。すなわち一つの点がわからなければ、そこから前には進めない。しかし今は、他の点を増やしていけば、いつかわからなかった点もわかるようになるので、落ち込むことはないということかもしれません。世界はいろいろなところでつながっているので、一つの点の不知について気にする必要はないのです。

私も論文を書いていると知識不足で筆が止まることがあります。ある一点で行き詰るということです。そんなとき、しばらく別の周辺テーマの調査を開始します。すなわち周辺分野で他の点を増やしてみる。そうすると、増やした点が行き詰まっていた点につながり線となり、さらに面となって立体を形成することがあります。その結果、論文の序論、本論、結論がきれいに流れるように構成される。不思議なものです。

また、高校数学を勉強しているのですが、数学Bの後半でつまずきました。でもしばらく放置して、数学Ⅱをやってみると、数学Bの公式の意味が理解できるということがありました。わからないこと、知らないことに執着せず、放置しておくことも必要ということを知りました。

何となくとりとめのない話になりましたが、これからの学びはわからないことがあってもいいということ。知らないことがあっても大丈夫ということ。子どもの大人も、追い詰められながら勉強する時代ではないということだと思います。のびのびと好きなことから学び、自分の中に知識やノウハウの面や立体を作ることが大切なのでしょう。