わが国の温暖化対策では、毎年膨大な費用が計上されています。もとをたどれば、それは私たちの税金なわけです。使い道として温暖化対策に巨額の資金を投入することが正しいのか大いに疑問です。渡辺正『「地球温暖化」狂騒曲』(丸善、2018年)によると、2017年は約5兆円が使われたそうです。これは、2018年度国家予算に計上された防衛費とほぼ同額です。一方でその効果についは検証は難しく、ただ補助金などで潤った企業があるだけというのが実態ではないでしょうか。
環境科学が専門の渡辺氏の基本的見解は、人為的な活動が地球温暖化に大きく影響はしていないというものです。そもそも過去に二酸化炭素が気温をどれだけ上げて、今後いくら上げそうかというのは不明であり、科学的にも証明は困難といいます。そして、人為的な二酸化炭素排出が異常気象を増やした証拠はないし、海面を上昇させた形跡もほとんどありません。仮に人為的活動による二酸化炭素の排出が要因となり、気温が上昇するとしても、人類にとってプラスのことが多いそうです。大気に増える二酸化炭素は植物をよく育て、地球の緑化を進めて食料を増やします。これなどは小学生の理科の知識でも十分理解できます。また、植物の生育に望ましいばかりか、私たちの暮らしも助けます。たとえば、暖かい季節ほど死亡率は低く、冬が暖かければ暖房費も減ります。
環境問題の対策には予防と事後対応の二つがあります。地球温暖化であれば、二酸化炭素の排出削減が予防で、海面が上がったときの護岸工事などが事後対応になるでしょう。しかし、温暖化対策の予防の場合、つぎ込む資源、たとえばお金、時間、労力が桁違いに多いばかりか、実効がほとんど見込めません。渡辺氏が強調するのは、予防手段のうちには、一部の人々が潤い、ほか大多数が損をするものがあることです。
そして、渡辺氏の分析によると、2013年から2030年の18年間において、わが国で温暖化対策に80兆円使って0.001℃以下の成果しかないという結果になります。すなわち、EUのデータによると、2015年の世界の二酸化炭素排出量は全世界の3.5%しかありません。そして、IPCCのデータによると、直近100年で1.5℃上昇しており、そのままの勢いでいくと、2013年~2030年の18年間に地球の気温は0.27℃上がる計算になります。人為的二酸化炭素の寄与度が仮に0.27℃の半分強で0.15℃と仮定してみます。世界全体で3.5%しか二酸化炭素を排出しない日本が、パリ協定で目標設定した21.9%の排出削減を実現すると、地球を冷やす効果は、「0.15℃×0.035(全世界の日本の二酸化炭素排出量)×0.219(パリ協定の日本の削減目標)」になります。つまり、0.001℃に過ぎません。この計算であれば小学生の算数の知識でも十分わかります。
この0.001℃下げるために80兆円の対策費が必要であろうかというこが問題提起されるわけですが、もちろん答えは不要です。なぜ立派な大人が、小学生の理科と算数でもわかる道理を間違えるのでしょう。それは間違えているのではなく、裏には金儲けのための情報操作や印象操作があるのかもしれません。温暖化対策には、私たちの税金が使われています。そのことを踏まえて、私たち一人ひとりが小学生の理科と算数の知識をフル活用してこの対策の意義を再度検証したほうがよいのではないかと思います。