職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

教育

個人の幸福より社会の効率を求める教育システム

ランキング参加中高等教育 パンデミック社会がなかなか終わらない日本です。マスクは社会の風景を大きく変えるし、視覚的にも異様な世界をつくり出すので、いつまでもパンデミックが継続するような錯覚をもたらします。ヨーロッパの各国は、とっくに次のステ…

大学の序列付けにみる東京の貧しさ

ランキング参加中高等教育 受験シーズンですが、自分の子どもが大学受験なので、書籍やネットでいろいろ調べる機会がありました。そこででてくるキーワードに「早慶上智」、「MARCH」、「日東駒専」、「大東亜帝国」、「Fラン」などがあります。いずれも東京…

近い将来大学は崩壊し再生する

ランキング参加中高等教育 「選択と集中」、「競争的研究費」、「ガバナンス改革」、「グローバル教育」、「国際的卓越大学」など、まるでビジネスにおける経営戦略でも語るかのように、大学のあり方についても言葉が躍っています。ところが、このようなビジ…

10兆円ファンドの認定大学から「学問の自由」が消える

ランキング参加中高等教育 10兆円規模の大学ファンドを創設し、運用益を大学支援に充てるという、国際卓越研究大学制度といものがあります。文部科学省が発表した基本方針によると、2024年度から認定大学に対して利益が分配されることになります。この制度に…

文系と理系で人生を選択しない

大学受験のシーズンですが、日本では高校生の段階から文系と理系に分けて大学受験に挑みます。私の場合も高校3年生のときに、それまでの国立理系から私立文系という脈略がない選択をしました。それだけ深い考えなどなかったのでしょう。最初に理系を選んだの…

人工知能時代の大学教育の役割

ランキング参加中高等教育 学びながら働き、自己実現と社会貢献をと提言するのは、社会人教授の宮武久佳氏です。著書『「社会人教授」の大学論』(青土社、2020年)の終章に掲げられた六つの提言の一つに、大学は「在学期間10年を標準に」というのがあります…

「自由」を獲得するための大学生活

そろそろ大学受験シーズンが到来します。今まで一生懸命に勉強してきた成果を出す場面です。それが終われば、人生で最も自由度が高い学生生活が待っています。この「自由度が高い」というのが大学におけるカギとなる要素だと思いますが、「自律」が要求され…

社会を分断する日本の高等教育制度

最近、長男が大学受験をするということで、いろいろな角度から大学を調べる機会がありました。やはり驚くことは学費です。情報系学部を志望する長男の場合は、文理融合学部ということで、文系学部よりも学費が高く、理系学部よりも学費が低いという中間に位…

私大推薦入試の惨状を知り国立大学志望へ

自分の三人の子どもたちが順次大学受験をする時期に来ています。三人とも大学には行きたいようなので、否定するつもりはありません。そんな時期にネットでみつけた、船橋伸一=河村振一郎『夢をかなえる大学選び』(飛鳥新社、2019年)を読む機会がありまし…

社会人教授というバブル

社会人教授という職種はバブル化しているようです。その意味するところは、ある一定数の人が実態以上に評価されている、あるいは本当の実力が不明瞭でありながら、その地位に就けている状態といえそうです。私にとって比較的身近な存在なので、現在バブルが…

社会人大学院生は10年から20年後の成果を目指す

1990年代初めから大学では大学院重点化ということが行われています。大学における教員のポストが増えるわけでもないのに、なぜ研究者を養成する大学院を強化していったのでしょうか。いろいろな理由があるようですが、酒井敏『野蛮な大学論』(光文社新書、2…

研究の世界に「選択と集中」は必要か

日本の研究力の低下に関する記事をよく目にするようになった。天野郁夫『国立大学・法人化の行方』(東信堂、2008年)によると、国立大学については、法人化後に外部資金獲得の涙ぐましい努力や、経費節減のための人員配置の効率化、職員の企画力や業務遂行…

オンライン教育に過度の期待はできない

オンライン教育というものをどのように考えていくべきか。もろ手を挙げて賛成とはいかないかもしれない。自分自身は、大学院の博士課程をほぼオンラインで受講している。約1年3か月になるが、大学院に行った回数は2回である。そして、博士課程の場合は、指導…

子どもが多くてすいません?

一年以上前に渡辺由美子『子どもの貧困』(水曜社、2018年)を読んで、貧困層にいる子どもたちを支援しようと決めておきながら、そのことを忘れていたことを思い出した。当時、NGOを通じて海外の二人の子ども支援していたが、一人減らして、もっと身近な日本…

人生で大学に三回入学する

大学に三回入るとはどういことか。吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書、2016年)によると、OECDの2011年のデータ等に基づくと、日本の大学の25歳以上の入学者が占める割合はわずか2%しかいない。世界の先進国でこれほど低い割合の国はないとい…

大学院重点化の失敗を成功に転化する

大学院重点化は失敗だった。1991年以降、東京大学大学院法学政治学研究科をきっかけに重点化を実施し、その後、他の国立大学も追随していった。その結果、大学院生は増加するものの、質の低下を招き、大学院修了後の就職先もない状況で、多くの無職の博士号…

法科大学院が法学研究を衰退させるのか

日本の多くの大学で法科大学院(ロースクール)が設立された。制度自体は2004年にはじまっているが、法科大学院に対する懐疑的な意見は多い。しかも、すでに閉鎖した法科大学院の数のほうが、存続している法科大学院の数よりも上回っている。存続している法…

大学院はリモート博士の時代

論文を書くことが多くなり、一般のテーマで文章を書く時間がなくなった。今年から論文博士を断念し、課程博士に切り替えたからである。しかも学ぶ大学院は、横浜在住でありながら神戸である。すなわち、リモート博士である。これは明らかにコロナのおかげと…

昔の大学教授の魅力は人間力

本棚の奥から1992年の「大学院要覧」がでてきた。懐かしい先生の名前もあり、講義内容も説明されており当時の学問の流行も感じられた。そして、当時の先生方の業績はどのようなものだったのかと思い、国立国会図書館のウェブサイトの検索機能で調べてみて気…

「未来への投資」を忘れた日本の高等教育

酒井吉廣「コロナで待ったなし、国立大学の改革を支える自主財源の拡大」金融財政事情72巻3号(2021年)を目にした。昨年、東京大学が大学債を発行したのをきっかけに、大学の独自経営には自主財源の拡大が必要ということである。 世界の大学債は、残高ベー…

人としての能力を奪うIT技術に注意

最近、30年前に書いた修士論文の要約を書く機会があった。30年前の論文は400字詰め原稿用紙に手書きである。幸い、20年前にその手書き論文を業者にお願いして、ワードでタイプしてもらっていたので、ワード原稿で読むことができた。さぞかしひどい論文かと思…

「子どもの教育は親の責任」ではない

日本の大学における財源確保のために大学基金の設立よりも、公共投資として大学への予算配分を大幅に増やすべきだと思う。これは長期的な投資であり、リターンは必ずあるであろう。 図表は過去の大学の初年度納付金の推移を、国立大学と私立大学に分けて比較…

アメリカの大学基金は日本で成功しない

2020年11月27日の日本経済新聞・私の履歴書に元東京大学総長の小宮山宏氏の「信託基金」に関する記事を目にした。ハーバード大学やスタンフォード大学といったアメリカの私立大学では卒業生から寄付を集め、巨額資金によって投資による運用益を得ているとい…

アウトプットを前提にインプット

効果的なインプットを実行したい場合は、アウトプットが前提のほうがよいと思われる。たとえば、本を書く、論文を書く、ブログを書くという前提でインプットすると、漫然と本を読み漁るよりも効率的である。 筆者の場合、論文を書く前提で書籍を読むと、引用…

プレプリントの論文は価値がないのか

プレプリント(preprint)の論文とは査読前論文で、厳格な審査を経ていない論文がインターネット上に掲載されるものである。とくに自然科学の分野などは、時間との勝負がある場合や、実験結果の検証が不十分な段階でもある程度結果に確信が持てる場合は、プ…

「株」「不動産」「投資信託」あるいは「英語」

確実なリターンを得られる投資は何か。株や不動産、投資信託、金、商品先物取引、どれをとっても元本保証はされない投資である。その点、自己投資としての英語は比較的確実な投資といえる。とくに20代の人で300万円あれば、1年でもいいので海外留学するとよ…

「理論と実務を架橋する」実践の難しさ

「理論と実務を架橋する」「理論と実務の橋渡しをする」ということはよくいわれるが、これほど頻繁に聞くにもかかわらず実践が難しいものもない。研究者は学術の世界に安住し、簡単なことを難しい表現で表し、実務家は日々の業務に忙殺されて、日々理論的な…

スペシャリストは複数分野の専門家になる

速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店、2006年)というかなり分厚い本を読んで驚いたことは、著者が経済史と歴史人口学が専門であるということ。感染症や医学の専門家ではない著者が、あれだけ大きな被害をもたらしたスペイン・インフ…

この世界に「独り勝ち」はあり得ない

日本という国は本当に冷たい社会である。貧富の差はどんどん拡大し、お互いのことに対して配慮がなくなってきている。自己責任という言葉で、貧困も本人の責任としてすべて押し付ける。そもそも、多くの富裕層は、日本に貧困層がいることにも気が付いていな…

本当の生涯学習が必要な時代

日本では、子どもの教育には親が責任を持つべきで、親が大学の学費を出してやるという感覚が強い。そして、小中学校から私立の学校に子どもを送れる家庭は、相当な経済力が必要である。私立学校に入学するためには専用の塾に通う必要もあるので、そこでも授…