スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

2020-01-01から1年間の記事一覧

経済界に「フランス革命」は必要か

デービッド・アトキンソン『日本人の勝算』(東洋経済新報社、2019年)によると、日本は賃金を上げる必要があるという。そして、日本は生産性が低いので中小企業を統合して、大企業と中堅企業へと再編すべきということのようだ。アナリストとして自身が入手…

価値ある日本のパスポートを使う

今から20年以上前の話であるが、ルーマニアに旅行中、首都ブカレストで2回ほどニセ警官につかまった。彼らはおよそ3人1組になっている。オデオン劇場の前を歩いていると、まず一人の男が私に近づいてくる。ちょうど周りには人がいなかった。 「すみません、…

能力があっても報われない世界

1999年当時、私がルーマニアという国をみてみようと思ったきっかけは、日本に出稼ぎにきているルーマニア人女性が、本当に能力がありながら仕事がみつからず、アジアの辺境の国、日本に来ていることに驚きを感じたからである。ブカレスト大学法学部に入学し…

「ジョブ・カード」で自分にレッテルを貼る

ジョブ・カード制度は、2008年に制度導入されたもので、職務経験や学習歴、職業訓練歴、学歴、免許、資格などを記入していく履歴書のようなものである。履歴書と何が違うのかというと書式が決まっていて、その書式にそって自分のことを記入していくことにな…

「ジョブ型人材」の戦わない戦略

メンバーシップ型からジョブ型に社会が移行するとしても、怖がる必要はない。人に仕事が与えられていた社会が、仕事に人が当てられる社会に変わるだけのことだからである。今までは活躍するかしないかわからない新卒学生を採用し、無理やり仕事を与えて育て…

「メンバーシップ型雇用」の行き詰まり

最近、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に日本社会が移行してきているようであるが、しっかり目の前の仕事をして自分を磨いている限り、変化を恐れる必要はない。このメンバーシップ型とジョブ型の違いをうまく表現する日本語に、「就社型」と「就職型…

転職市場のリクルーターは人生の伴走者

人材紹介会社の活動は1990年代後半から徐々に活発になってきたと思われる。実際に登録すると、想定される転職後の年収が提示されるサービスがあったと記憶する。当然、人材紹介会社としては伝統的な日本企業にしがみつく優秀な人材に転職を促し、自分たちの…

「ダイバーシティ」の本当の価値はリスク管理

組織のダイバーシティを促進すると、製品開発やマーケティングなどによい影響を与え、企業のパフォーマンスが向上するという説や実証研究は多い。ダイバーシティを推進している企業の業績が良いのか、業績の良い企業がダイバーシティを推進しているのかは定…

1999年ルーマニアの年収は20万円

1999年、ルーマニアに留学しようとある団体の奨学金に申し込んだことがある。 「厳しい寒さが続いていますがご健勝のこととお慶び申し上げます。 さて、ご応募いただいた「2000年度日本人留学生奨学生」は30名の採用予定に対し544名と極めて高い競争率となり…

「人種差別」は世界共通のことと割り切る

最近は多くの外国人が日本に訪れ働くようになった。以前は3Kといわれる仕事が多かったが、近年は外資系企業の日本進出のため、いわゆるホワイトカラーの進出が目覚しい。また、留学生が非常に増えてきている。これは日本人学生が海外へ留学することが減って…

「科学」よりも「直感」に頼ることも

少しずつ新型コロナウイルスがアジア地域の人にとっては、極論するなら鼻かぜ程度ではないかということが主張されてきている。井上正康『本当はこわくない新型コロナウイルス』(方丈社、2020年)も、上久保氏らの免疫獲得説にフォローするように、日本は弱…

「善悪の判断」を放棄することの快適さ

髙島清『バラータ』(郁朋社、1999年)によると、ルーマニア大統領チャウシェスクの時代、「ルーマニア人のような優秀な民族は、数が多くなくてはならない」というのが大統領の口癖であったという。人口を増やすことについては、チャウシェスクの妻、副大統…

企業に対するアカデミック・アドバイザー

ありがたいことに、自著の『先端的D&O保険』(保険毎日新聞社、2019年)で、2020年の日本保険学会賞(著書の部)をいただいた。日本保険学会というのは250名弱の研究者と500名強のその他大学関係者以外の人が会員になっており、社会科学系でもかなり古い伝統…

「英語」vs.「専門性」のバランスをとる

著名なコンサルティング会社のマッキンゼー社による、企業経営者のダイバーシティが企業業績に与える影響について調査した論文がある。Vivian Hunt et al., Delivering through Diversity, (2017) によると、企業の役員の性別や民族に多様性があるほうが好業…

専門分野を理解するための語学学習

山崎正男『陸軍士官学校』(秋元書房、1990年)によると、陸軍士官学校時代に外国語の成績が良かったものは、将校になってから出世しているという。また、陸軍大学校の卒業時に成績優秀だった人は、海外留学の機会を得られた。たしかに、将校は日本の外に出…

「人間は必ず死ぬ」という前提の政策決定

著名な科学者が動画で学生に自粛を呼びかける。みなさんの賢い行動が人の命を守るという。皆さんの大好きなおじいさんやおばあさんを守るという。それは端的にいうと自粛しない若者は愚かであるというメッセージのようでもある。しかし、本当にそうであろう…

権威に寄り添うだけでは見えない事実

上久保靖彦氏らによる新型コロナウイルスの論文が、2020年5月3日に第1バージョンとして発表され、6月23日に第2バージョンが出されている。Yasuhiko Kamikubo, Toshio Hattori, and Atsushi Takahashi, Paradoxical dynamics of SRS-Co V-2 by herd immunity …

土着語を学ぶことで得られる深い楽しみ

日本人海外駐在員の語学力が一般的に高くないことは認識されている。秘書がいるし日本人スタッフもいるので現地スタッフとのコミュニケーションもそれほど必要ない。そもそも現地人の上司がいないので語学力は向上しようがない。まだ、日本の外資系企業で外…

英語は「世界語」の地位から降りるのか

多くの人にとって英語を学ぶ動機は経済的理由と直結しているかもしれない。英語の運用能力があれば選べる仕事の選択肢は増えるし、実際に高い年収を獲得できる傾向はある。また、日本企業に勤めていたとしても自分の会社が突然破綻しても、外資系企業への転…

経済的な豊かさと相関する英語力

英語の運用能力と収入は比例するのであろうか。相関はあるかもしれないが、ある一定のレベルになれば影響はなくなると断言できる。TOEICの900点と800点で年収の差が生じるとは思われない。それよりも問題は業務知識の厚みであり、英語の点数の差ではない。最…

「株」「不動産」「投資信託」あるいは「英語」

確実なリターンを得られる投資は何か。株や不動産、投資信託、金、商品先物取引、どれをとっても元本保証はされない投資である。その点、自己投資としての英語は比較的確実な投資といえる。とくに20代の人で300万円あれば、1年でもいいので海外留学するとよ…

英語という「弱み」が「強み」になるとき

ビジネスの世界においてパワーポイントで資料を作成することが増えている。通例は短い文章を箇条書きにしたり、図表を多用したりすることで読み手の理解を容易にする技術が使われる。そこで、プレゼン資料をパワーポイントで作る機会があれば、和英二か国語…

イスラームからビジネス法を学ぶ

一般的にはビジネスに関する法律を学ぼうとする人は、アメリカ法を学ぶことが多い。実際に戦後、わが国おける会社法や金融商品取引法などに、アメリカ法の要素が多く取り入れられた。当然、アメリカに占領されていたし、戦後はアメリカとの経済取引が多かっ…

英語学習から多言語学習へ

よく英語学習にCNNが良いのかBBCが良いのかという話があるが、社会人にはとくにBBCをお勧めする。アメリカ英語が良いかイギリス英語が良いかという視点からそのようにいうのではない。そもそも日本人にとってはアメリカ英語でもイギリス英語でもどちらでもよ…

「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」へ

英語を学ぶことが重要なのは間違いないが、本当に英語を学ぶことで英語力が身につくであろうか。義務教育のレベルでは「英語を学ぶ」ことでよいが、大学のような高等教育機関になると、「英語で学ぶ」に転換しなければならない。もちろん、ビジネスパーソン…

「理論と実務を架橋する」実践の難しさ

「理論と実務を架橋する」「理論と実務の橋渡しをする」ということはよくいわれるが、これほど頻繁に聞くにもかかわらず実践が難しいものもない。研究者は学術の世界に安住し、簡単なことを難しい表現で表し、実務家は日々の業務に忙殺されて、日々理論的な…

スペシャリストは複数分野の専門家になる

速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店、2006年)というかなり分厚い本を読んで驚いたことは、著者が経済史と歴史人口学が専門であるということ。感染症や医学の専門家ではない著者が、あれだけ大きな被害をもたらしたスペイン・インフ…

他者と競争しない「ニッチ(居場所)」を探す

グローバルニッチトップ(global niche top)はビジネスの世界でもあまり普及していない概念であるが、これからの事業モデルを考えるうえで重要だと思われる。もともとは、ドイツの経営学者でコンサルタントのハーマン・サイモンの『隠れたチャンピオン(hid…

論文投稿やセミナー講師は副業ではない

スペシャリストとしてある分野に精通してくると業界誌に論文を投稿したり、セミナー講師を依頼されたりする機会があるかもしれない。その場合、原稿料や講師料という名目で報酬を得ることがある。会社によって異なるであろうが、就業規則に副業や兼業を規制…

この世界に「独り勝ち」はあり得ない

日本という国は本当に冷たい社会である。貧富の差はどんどん拡大し、お互いのことに対して配慮がなくなってきている。自己責任という言葉で、貧困も本人の責任としてすべて押し付ける。そもそも、多くの富裕層は、日本に貧困層がいることにも気が付いていな…