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専門職大学院にはどのような役割があるか

専門職大学院とは大学の世界における単なる呼称ではなく、学校教育法99条2項において「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする」と明確に規定されている。

一方、この条文における「大学院」とは、学校教育法99条1項に「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする」とあり、通常の大学院と専門職大学院の相違は文言だけからはわかりにくい。条文から強いて差異を抽出するのであれば、文化の進展に寄与することを目的にはせず、高度の専門性が求められる職業を担う人材育成だけを目的にするのが専門職大学院のようである。

文部科学省のホームページにおける説明によると以下の通りである。

「理論と実務を架橋した教育を行うことを基本としつつ、1:少人数教育、双方向的・多方向的な授業、事例研究、現地調査などの実践的な教育方法をとること、2:研究指導や論文審査は必須としないこと、3:実務家教員を一定割合置くことなどを制度上定めています。

制度創設時から法曹(法科大学院)、会計、ビジネス・MOT(技術経営)、公共政策、公衆衛生等の様々な分野で開設が進み、平成20年度には、実践的指導能力を備えた教員を養成する教職大学院が開設し、専門職大学院は、高度で専門的な知識・能力を備えた高度専門職業人を養成することが期待されています。」

そして、総じて授業料は通常の大学院よりも高額になっているところが多い。当然、実務家教員を呼んだり、新しいカリキュラムを作成したり、実務に適応した教材を作成したりするわけなので、専門職大学院を運営するコストが高くなることは想像できる。しかし、この専門職大学院に行かなければ就けない職業などはないといってよい。そうであるならば、なぜ社会人が専門職大学院にわざわざ行くのであろうか。箔をつけるために授業料を支払ってもよいと思っているひとであれば、それはそれでよいが、本当に実務能力を高めるため、高度な専門性を身につけるためと思っている人にとって、専門職大学院はその期待に応えることができる質は保たれているのであろうか。あるビジネススクールでは、実務家教員が学生の論文を盗用して自分の論文として公表するようなことまで起きている。