スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

旧文部省の大学院改革の狙いは何だったのか

課程博士の最大の問題は大学院生の就職難である。そもそも日本全国の大学にポストもないのに、なぜ大量の博士が生まれたのか。少子化で大学経営も厳しさを増すことが明らかだったにもかかわらず、なぜ多くの人が大学院に進学しだしたのであろうか。 1991年は…

「論文博士」を導入する大学にとってのメリット

たとえば、指導料や審査料に仮に30万円を徴収したとしよう。大学としては30万円程度では利益に貢献しないといえるだろうか。ドイツ型やフランス型の論文博士制度を導入した場合の最大のメリットは、大学が外の知を取り込めることではないかと考える。とくに…

博士号のない教授のための「論文博士」制度

松野弘氏は『サラリーマンのための大学教授の資格』(星雲社、2014年)のなかで、大学教授になるには博士号が必須であり、社会人教授についても博士号の取得を要件とすべきことを提言する。専門的・学術的な教育を受けておらず、博士号はもちろんのこと、修…

日本の高等教育はアメリカの模倣でよいのか

ドイツやフランスに論文博士に類似の制度がありながら、なぜ日本では課程博士が主流になってしまったのであろうか。おそらく、戦後アメリカの高等教育システムを模倣したためであろう。天野郁夫『国立大学・法人化の行方-自立と格差のはざまで』(東信堂、2…

「論文博士」の起源はドイツやフランスか

仕事柄よくドイツの再保険会社の人と面談することがある。名刺交換すると博士号取得者が多いことに気がつく。先方は普通のビジネスパーソンであり学者でもなんでもない。不思議に思っていたが、どうやらドイツには日本の論文博士に類似する制度があるようだ…

就職活動が不要な「論文博士」

課程博士の就職難が改善されない。これは1990年代以降に大学院重点化政策が実施され、大学院生が急増したためといわれている。そもそも大学教員という就職先がそんなにあるわけでもないのになぜ大学院重点化がなされたのであろうか。もちろん、わが国の基礎…

会社を大学院として使いこなす

ビジネスにかかわる社会科学系の大学院博士課程で20代の貴重な時間を費やすのは否定的にならざるを得ない。修士課程に関しては考えが定まらないが行ける機会があるのであれば行ってもよいであろう。論文の書き方くらいは学べる。もちろん、行かなくても学べ…

査読付き論文の活用方法

査読付き論文の話も出たので説明しておく。一般的に複数の審査員の指摘を経て、その後加筆修正しながら論文の質を上げ、最後に審査員の方々の承認を経て、学術誌に掲載される論文のことである。私が「損害保険研究」に投稿していたころは、査読付き論文の制…

「論文博士」の学位申請書類

次に、だれでも申請できるとはいえ、たとえば、東京大学の場合、学位申請者は次の申請書類を準備する必要がある。ちなみに△は場合によって提出する書類で必須ではないようだ。この申請書類一覧も「学位申請者(論文博士)のための手引き」に記載されている。…

開かれた博士号への道

日本だからこそ論文博士の制度は残すべきであると思うのは、次の理由による。まずヨーロッパ大陸諸国の大学に比較して圧倒的に学費が高いので、論文審査料だけで済む制度は社会人にとって貴重であるというものである。そもそも、日本では子どもがいれば子ど…

「欧米では」という議論の違和感

前回の「諸外国」とはどこの国を指しているのだろうか。違和感のある議論のスタートとして、相当な権威のある方でも「欧米では」という表現が使われ、ヨーロッパとアメリカを同質に扱う傾向がみられる。しかし、ヨーロッパとアメリカは異質であり、ヨーロッ…

「論文博士」は廃止されるのか

将来的に論文博士は廃止されるという意見もあるが、どうなのだろうか。 2005年6月13日、文部科学省の中央教育審議会の総会で大学院改革に関する中間報告「新時代の大学院教育 - 国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて - 」の中で「論文博士の在り方の検…

文系の「論文博士」の評価基準は明確か

一般的に論文博士で博士号を取得しようとするケースは、①大学教員でありながら博士号を取得されていない者が論文を提出して学位を申請する場合、②社会人が自分の職業経験をベースに、その経験を理論化して論文を提出して学位を申請する場合の二つのパターン…

文系の「論文博士」と「課程博士」は同じ水準か

博士論文の水準にかんしては、近江幸治『学術論文の作法』(成文堂、2011年)によると、早稲田大学大学院法学研究科の例を挙げて、特定のテーマに関して、執筆者の創造性と高い知見とが要求され、分量は外国人留学生に140,000字程度を要求しているので、それ…

「論文博士」とは何か

これから話を進めるためには、まず論文博士について理解する必要がある。まず、博士には2種類あり、学校教育法104条1項に基づいて、大学院の博士後期課程を修了によって取得する博士号を課程博士といい、同第2項に基づいて大学院への在籍とは関係なく論文提…

会社への従属から業界への帰属へ

たとえば、社会人にとって博士号への挑戦は、たとえ学位が取れようと取れまいと、多くの人にとって価値のある取り組みになる。何十年も実務経験を積んできた内容を理論的・体系的に分析し整理することで、その後の業務に大きな意義を与えてくれる。たとえば…

結婚とは「戦友」を得ることである

昔ながらの考えで女性は結婚で退職するという発想もある。いろいろな生き方があるので「寿退社」を否定するつもりはないが、それでも20代で勝負しておくメリットはある。結婚すると人生のステージでいろいろな課題が目の前に現れる。小さなことから大きなこ…

女性にも有利な「30歳定年制」

30歳定年制は、女性にも望ましい結果をもたらす。むしろ、女性が活躍するためにも導入すべき制度である。女性の場合、30歳前後といえば結婚して出産の時期となり、いったんは職場を離れなければならない。よって、大学を卒業後、会社に入社した数年間は、必…

30歳までに「職人」になる

30歳までに職人になることを提唱したい。30歳までにある特定分野の技術を身につけ、他の会社でも通用するスキルとすることが重要である。その会社でしか通用しないものでは困る。あらゆる人材が、どのように社会へ価値を提供できるかを考えていかなければな…

「30歳定年制」を導入すべき理由

ところで、私見としては40歳定年制にするなら30歳定年制にしなければいけないと思う。もし、日本の労働市場で、新卒一括採用が変わらないのであれば、大学卒業後に入社した人は、30歳までの有期雇用契約を締結する。あるいは、10年の有期雇用契約でもよい。…

「40歳定年制」が提案する終身雇用の終焉

柳川範之氏の『日本成長戦略40歳定年制』(さくら舎、2013年)によれば40歳定年を推奨している。いくつかポイントがあるが、技術革新のスピードが速くて、若い時代に身につけた技術がいつまでも使えるものではないこと、長寿化で働く期間が長くなったこと、…

定年延長で市場価値が落ちる

高年齢者雇用安定法のおかげで65歳まで定年延長する人が増えている。しかし、郡山史郎氏の『定年前後の「やってはいけない」』によると定年延長はしないほうがよいことになる。望ましくは55歳前後で退職し、次の仕事に突入してしまうことがよいそうだ。そし…

変わる日本の労働市場で職人になる

わが国では、解雇権濫用法理によって雇用の維持が最も尊重され、一方で労働条件の柔軟な変更が認められ、企業内部で柔軟性を維持して調整がなされるという。そして日本の対極に位置するアメリカは「随意雇用(employment-at-will)」契約で解雇はなんら条件…