高年齢者雇用安定法のおかげで65歳まで定年延長する人が増えている。しかし、郡山史郎氏の『定年前後の「やってはいけない」』によると定年延長はしないほうがよいことになる。望ましくは55歳前後で退職し、次の仕事に突入してしまうことがよいそうだ。そして、さらによりよい仕事を見つけて65歳以降も働くことである。たしかに、同じ会社で65歳まで雇用延長してしまうと、65歳でプツっとキャリアが切れてしまう。また、65歳まで同じ会社にしがみついても、周囲からは歓迎されないことも多い。上司風あるいは先輩風を吹かせて態度の悪い高齢者をだれも相手にするわけがない。どうせなら、まったく新しい会社で一からやり直します、という気概で謙虚に周囲と接することが大切なようである。70歳を過ぎても働きたいのであれば、なおのことそうしたほうがよい。しかし、これができない人が多い。それは、どの会社でも応用できる技術を持っている人材が少ないからである。その会社のみでしか通用しないスキルや人脈は、年を取ればとるほど無価値になる。
たしかに、同じ環境に身を置き続けることは楽であろう。年齢を重ねた後に職場を変えるのは相当な勢いと覚悟が必要である。よって、なおさら新しい環境に突入するのは早いほうがよいのである。また、自分が社会からどの程度必要とされているのか、労働市場を通じて早いうちに確認することは、その後の対策を立てるのに必須である。自分の市場価値が把握できなければ対策も打ちようがないからである。
そして、その会社でしか通用しないスキルよりも、ある業界、ある産業に貢献できる技術を使い、社会の進歩に役立っている実感が欲しいところである。その点、自分がいままで学び経験してきたことを論文や書籍、ブログとして整理しておき、できる限り普遍化しておく作業は、社会貢献ということでも意義がある。とにかく会社の外で批判にさらされるということを通して、自分のスキルを客観的に観察する過程が必要である。