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「論文博士」の学位申請書類

次に、だれでも申請できるとはいえ、たとえば、東京大学の場合、学位申請者は次の申請書類を準備する必要がある。ちなみに△は場合によって提出する書類で必須ではないようだ。この申請書類一覧も「学位申請者(論文博士)のための手引き」に記載されている。

 

1.製本論文5部

2.論文の全文PDF電子データ

△ 3.参考論文5部

4.論文の内容の要旨6部及び電子データ

5.学位申請書(所定の様式)2部

6.履歴書(所定の様式)3部(正2部、写し1部)

7.論文目録(所定の様式)3部(正2部、写し1部)

△ 8.同意承諾書(所定の様式)2部(正1部、写し1部)

9.博士論文のインターネット公表に関する確認票(所定の様式)3部(正1部、写し2部)

10.許諾書(所定の様式)3部(正1部、写し2部)

△11.博士論文公表方法に関する特例申請書(所定の様式)3部(正1部、写し2部)

△ 「やむを得ない事由」を具体的に説明する資料3部(上記申請書に添付)

△12.論文の要約PDF(一部除外・要約・書誌情報)電子データ

13.論文審査手数料160,000円(申請後に振込)

ただし、本学の学部若しくは大学院の学生として在学していた者又は本学の教職員

として在職している者は、60,000円。納付は銀行振込による。

 

この中で一番重要なのは、当然、学位申請論文。つまり博士論文を完成させなければ学位の申請ができないので、まず博士論文を作成しなければならない。その他、ポイントになる業績で、著書や論文の数や質において最低限クリアしていなければならない水準があるようである。これは各大学によって異なり、学内で学位審査をする執行部のメンバーによっても違うのだと思われる。よって、その辺の水準は各大学に問い合わせるとか、あるいは経験者に聞く必要がある。当然、その要件のハードルが低い方が学位申請者にとっては望ましいと思われるが、結局、ある一定の論文数がなければ、博士論文の完成も難しいと思われるので、あえて事前に詳細を確認する必要はないかもしれない。自分で過去の業績と博士論文の質に関して自信がついたときに各大学や教授に確認することでよいと思われる。

ここで、査読論文の有無については、よく査読付き論文が数本ないといけない、ということがいわれるが、社会人の場合、学会などには所属していないこともあるので、そもそも査読をしていただくチャンスが得られないこともあろう。私の場合、損害保険業界の研究機関である、公益財団法人損害保険事業総合研究所の機関誌「損害保険研究」に投稿できる機会があった。昔は「損害保険研究」には査読制度がなかったが、学者や実務家で構成される審査員がおり、いろいろ論文に対して加筆修正のご指摘をいただいた。大学院に行かずとも無料で論文指導を受けることができ、原稿料もいただけるすばらしい制度があったことは幸運だった。また、公益社団法人商事法務研究会の機関誌である「旬刊商事法務」への投稿機会も非常に貴重であった。編集部のプロ意識が非常に高く、本当にここまでやるのか、と思えるほど精緻な校正をしていただいた。学会の機関誌以外にも歴史と格式のある雑誌などに自分の論文を投稿し続けることが重要かもしれない。

そして、社会人にとって課程博士ではなく論文博士が望ましい理由は、大学院に通うということが、やはり高いハードルになるからである。たとえば、次のような難点が存在する。

 

  • 博士論文を完成させるだけの経験や知識を得ることができるのは、おそらく40代や50代で、子どもがいる人にとっては子どもの教育費で精一杯な時期であること
  • 仕事を続けながら大学院に通い指導を受けるのは、それなりに時間的な制約を受けること
  • 博士後期課程は通常3年の修業期間であり、博士論文の完成に締め切りがあること、

 

以上の通り、社会人にとって大学院へ通学することの負担は、かなりのものと思われる。このような観点からも論文博士の制度は存続させるべきで、もっと利活用を考えていくべきものと思う。