スペシャリストの生き方

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「論文博士」とは何か

これから話を進めるためには、まず論文博士について理解する必要がある。まず、博士には2種類あり、学校教育法104条1項に基づいて、大学院の博士後期課程を修了によって取得する博士号を課程博士といい、同第2項に基づいて大学院への在籍とは関係なく論文提出のみによって取得する博士号を論文博士という。まずは該当する条文を読んでみよう。

 

第104条

第1項

大学(第108条第2項の大学(以下この条において「短期大学」という。)を除く。以下この条において同じ。)は、文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を、大学院(専門職大学院を除く。)の課程を修了した者に対し修士又は博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し文部科学大臣の定める学位を授与するものとする。

第2項

大学は、文部科学大臣の定めるところにより、前項の規定により博士の学位を授与された者と同等以上の学力があると認める者に対し、博士の学位を授与することができる。

 

2項において、単に「博士の学位を授与された者と同等以上の学力がある」という条件が付されているだけで、大学院に行けとも修了しろともいっていない。よって、だれでも実力があれば博士の学位を授与されることがあるということになる。ただし、だれでも博士号が取れるといっても各大学には条件が設定されており、その必要条件をクリアしなければ学位申請はできない。また、本条からわかるように学歴不問である。学士号も修士号も要件ではなく、高校卒業も要件とされていない、まさに実力勝負になる。

それでは、実際の条件をみてみる。東京大学の「学位申請者(論文博士)のための手引き」がインターネットで情報開示されていたので参照してみよう。まず、東京大学学位規則には次のようにある。

 

(学位の授与)

第2 条 本学において授与する学位は、学士、修士、博士及び専門職学位とする。

2 学士の学位は、本学の学部を卒業した者に授与する。

3 修士の学位、博士の学位又は専門職学位は、本学大学院の課程を修了した者に授与する。

4 博士の学位は、本学大学院の博士課程を経ない者であっても、論文を提出してその審査及び試験に合格し、かつ、専攻学術に関し本学大学院の博士課程の教育課程を終えて学位を授与される者と同様に広い学識を有することを確認(以下「学力の確認」という。) された場合には、授与することができる。

 

このように、学士の学位には学部を卒業という要件があり、修士の学位には大学院の課程を修了するという要件がある。しかし、4項における博士の学位にはそのような要件はない。よって、通学しなくても、学校を卒業あるいは修了しなくても博士号が取得できることになる。冷静に考えてみると、これからの時代の要請に応える教育制度ともいえる。独学でコツコツ学んだ成果を論文にして博士号を取得する人が増えれば、日本においても本当のスペシャリストが増えてくるはずである。