スペシャリストのすすめ

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日本の労働市場に長期インターンシップを

神戸大学の学部と大学院の労働法合同ゼミでお話をさせていただく機会を得た。おそらく、学生以上に自分が多くの学びを得た。なぜ日本で長期インターンシップが根付かないのか、少し課題がみえてきた。今のところの結論は、日本の教育制度が変わらない限り、日本の企業社会で長期インターンシップ制度は導入できないということである。

アメリカでは職業体験をインターンシップinternship)といい、フランスではスタージュ(stage)などという。学生が特定の企業におて6か月とか1年働き経験を積む制度で、無給のケースが多いが、稀に有給の場合もある。

しかし、このインターンシップであるが、日本でほとんど定着していない。日本におけるインターンシップは、学生が複数の企業を「覗く」程度の「社会科見学」と化しており、アメリカやフランスにおける職業体験とはかなり趣を異にする。

合同ゼミの前にアメリカの事情に詳しい人に聞いてみたところ、アメリカの大学生は、自分の考えに従って単位をとり、どの時間帯でどの授業を受けるかも自由で、卒業時期も自分で決められるということ。卒業のタイミングが3回あるので全員が3月に卒業するという状況にはない。考えてみる小学生でもないのに、同級生が同じ入学式と卒業式に参加するというのも、だいの大人として恥ずかしい気もする。

そして、学生の属性も多様で、フルタイムもいればパートタイムもおり、単位をとれるだけとって2年で卒業する人もいれば、日本のように4年で卒業の人もいる。また、しばらく休学して復学する人もいれば、年齢層もバラバラなので、本当に多様な人が学んでいる。このような環境があるので、長期インターンシップも学びと一つとして自然に受け入れられているそうである。

次にフランスのスタージュを確認してみた。いろいろなパターンがあるようだが、たとえば、A企業で6か月職業体験をして、B企業に就職することもあるという。必ずしも、A企業に入社したいから、A企業で職業体験をしているわけではない。もちろん、A企業で職業体験して、そのまま、A企業に就職するということもある。その場合はたまたま双方の意思が合致しただけのことである。よって、特定企業における職業体験が、そのまま当該企業への就職を意図しているものではなく、あくまでも大学のカリキュラムとして職業体験が組み込まれていることになる。学生としては社会経験することが目的で、就職することが目的ではないということだった。そして、学生のスタージュの経験は、企業からも高く評価されている。

たしかに、昨年フランスの知人のお子さんが、日本企業で職業体験をしたいので、私の勤務先でインターンできるか相談を受けたことがある。彼の場合、フランスのグランゼコールという高等専門大学校に通っており、そのグランゼコールの修了の要件として、長期インターンシップが組み込まれていた。ちなみに、グランゼコールは、日本の専門職大学院とは次元の異なる、エリート養成の高等教育機関で、そのような教育機関ではインターンシップは必須になっている。

ここで、日本に長期インターンシップ制度を導入するための要件を提示してみたいと思う。①卒業時期を年に複数回設けて、学生の学びに柔軟性を確保する、②長期インターンシップを大学の単位として認める、③企業側はそれなりの負荷がかかるので、学生の勤務は午前のみとか午後のみにする、あるいは週3日や4日勤務としてとして週休4日制あるいは週休3日制を先取りしてみる。このような柔軟な制度設計であれば十分成り立つような気がした。

重要なポイントは、学生が就職することを目的としてインターンシップをとらえるのではなく、あくまでも良質な社会経験を得るという姿勢で挑むこと。企業側は、優秀な人材を囲い込むのではなく、社会に人材を供給するという姿勢で学生を受け入れることが重要だと思われる。

企業側にしてみると慈善活動やボランティアではないという反論があるかもしれない。しかし、長期インターンシップ制度を通じて多くの優秀な人材を社会に輩出できる企業には、多くの優秀な人材が集まってくるはずである。仮にA企業でインターンを経験し、B企業に就職してしまった優秀な人材も、B企業で行き詰れば、A企業に戻ってくるであろう。

何となく、日本の労働市場を揺さぶるような、長期インターンシップ・プログラムの開発に興味が出てきた。なにか企業と大学で産学共同プロジェクトができないだろうか。日本の労働市場に多様性をもたらす取り組みは次世代の労働者にとって間違いなく価値があることだと思った。