心理学でいう「集合的無意識」、物理学でいう「暗在系」、宗教学でいう「空」など、実はすべて同じことをいっているのでしょうか。世俗的な言い方であれば「あの世」ですね。天外伺朗『未来を開く「あの世」の科学』(祥伝社、1996年)は、科学者が書いた本なのでとても説得力があり、この辺の背景を知るのに参考になります。
心理学者のユングは、人間の「無意識」というのは個人に所属するのではなく、全人類に共通であってつながっていると言っています。多くの人は、虫の知らせとか、テレパシー、シンクロニシティなど経験しており、何となく私たちの認識していない世界から情報をもらっているのかもしれないと思うことがあるのではないでしょうか。
集合的無意識の仮説で興味深いのは、無意識は時間を超越しており、未来を知っている可能性があるということです。ユングは予知夢をよく見ており、その夢が現実となるということは頻繁に経験したようです。
そして、物質がエネルギーだと言ったのはアインシュタインですが、デビット・ボームという物理学者は、物質だけではなく、精神や想念もエネルギーだと言っています。たしかに、私たちの想念にエネルギーがあるような気がいたします。思いは実現するといいますし、前向きな心持でいることで人生が好転することもあります。
デビット・ボームは、物質も精神もエネルギーとして暗在系にたたみ込まれていると説明します。明在系が見える世界で「この世」といってもよく、暗在系が見えない世界で「あの世」といってもいいでしょう。
そして、宗教でいうところの「空」もほぼ同じ概念ではないでしょうか。無常観といいますか、何もないわけで、数学でいえば「ゼロ」。でもこのゼロには、量子力学でいうところのゼロポイントフィールドのように、無限のエネルギーが存在するのかもしれません。
いずれにしてもアプローチが異なるだけで、この世の真実をあの世の科学で説明できる時代が来ているということはわかります。私たちは生きている限り、あらゆる悩みがつきまといますが、どのアプローチでもいいので、この煩悩から解放されることができるのであれば、どんなに快適な人生が送れるものかと期待してしまいます。ぜひ、多くの人を救うためにも、この辺の研究が進んでくれることを祈ります。