先日、自分の専門分野である経営リスク管理の分野で質問を受けました。その質問をAIを使って回答してみたら、自分の回答よりもわかりやすい結果が出ました。もう専門家も不要な時代になるのでしょうか。
質問は、「日本で設立された日本企業のアメリカ人株主が、アメリカの会社法に基づいて株主代表訴訟を提起できますか」というものです。
私の回答は、「日本の会社法に基づいて設立された会社の株主がアメリカ会社法で代表訴訟を提起するのは無理ですね。逆を考えて、アメリカの会社法に基づいて設立された会社の日本の株主が日本の会社法で代表訴訟を提起できないのと同じだと思います」です。
一方、AIの回答は「日本で設立された企業(日本法人)は、日本の会社法に基づいて運営され、日本の会社法の適用を受けます。そのため、たとえアメリカ人株主であっても、日本法人に対する株主代表訴訟は日本の会社法に基づいて提起する必要があります。日本で設立された会社は、日本の会社法に従う必要があります。株主代表訴訟の制度も、日本の会社法(会社法第847条)に基づいて規定されています」です。
続けて「アメリカの会社法(たとえばデラウェア州会社法など)は、原則としてアメリカで設立された会社に適用されます。日本法人に対しては、アメリカの会社法に基づく株主代表訴訟を提起することはできません。」となりました。
とにかく論理的で説得力があるのがAIの回答です。今回の件に限らず、とても模範的な回答をしてくれるのがAIですね。過去の膨大なデータから回答を導き出しているのでしょうから、私の頭よりはるかにいいのは明白です。
また、過去のデータから未来についても推論できるようなので、その点もすばらしいと思います。たとえば、財務諸表は会社の過去を表しているだけで、会社の未来を示していないということで、財務諸表分析に限界があるといいます。しかし、AIに分析させれば、会社の未来も見えてしまうのでしょうか。
それなら、個人の未来も見えてしまうのでしょうか。とても興味深い論点ですが、複雑系の科学の視点からはAIにも限界があるのだと思います。
また、総じてAIの回答は、独自性や新規性、ユニークさに関しては限界があるように思います。人間のアッと驚くような発想や着眼点という意味では、まだまだ人間のほうに優位性があるということです。
よって、これからは優等生を量産する教育ではなく、右脳を使ったり、瞑想したり、あの世から情報ダウンロードして着想を得るというような訓練・教育も必要なのかもしれません。とにかく、面白い世の中になってきました。