職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

ワクチン義務化の議論は人生の選択を促す

 アメリカにおても4月以降、ワクチン接種のスピードが鈍化しだしているようである。やはり春以降に世界的な流れが変わっているのではないだろうか。もちろん、マスメディアはそのような事実を積極的には報道しないが。

BBC News US & Canada, Vaccine hesitancy: Your job or the jab? 2nd July 2021 によると、アメリカの病院の医療従者が、ワクチン接種を拒否して、雇用主に解雇されている。連邦政府は労働条件にワクチン接種義務を入れることを合法としている一方で、共和党が知事の一部の州では違憲としている。州によって対応が割れだした。

たしかに、雇用の条件に自動車免許を要求したり、ある資格を要件とすることがあるので、ワクチン接種という条件も「契約自由の原則」の範囲内かもしれない。しかし、雇用差別ということで、雇用主を訴えることは可能であり、アメリカでは実際に不当解雇の訴訟が提起されている。日本であれば、民法90条のような私法の一般条項である公序良俗違反に憲法14条1項に定める平等の趣旨を取り込んで解釈することで雇用主を訴えることが考えられる。

民法90条 

「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」

憲法14条1項

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

Fox 42, Can your employer fire you if you don't get the COVID-19 vaccine? 8th May 2021 に掲載されている弁護士の見解は、労働者はそれほど心配する必要はないということ。なぜなら、良識のある雇用主は、ワクチン接種をしない25%の従業員を解雇するなどという愚かな判断はしないであろうと。ちなみに、アメリカの一部の地域では全人口の25%の人がワクチン接種をしないことを決めているようである。

しかし、冷静に考えてみると、人々はどの企業を選択するのか、どこで暮らすのか、自分で選択する機会が与えられたと考えることもできるかもしれない。すでにいくつかの企業で、パンデミックが落ち着いているので、在宅勤務から職場に戻るように指示が出て、それに対して拒否をする動きが出ている。いよいよ経営者も決断が必要な状況になってきており、次の時代を生き抜く組織づくりを考えなければならないようである。

想像するに、ワクチン接種の指示に静かに従う従業員だけの企業と、自分の頭で考えて判断し、ワクチン接種しないと決めた従業員のいる企業では、明らかにダイバーシティの観点でも、後者のほうが革新的な事業をする企業になることがイメージできる。そのうち、統計をとってみたらよいと思う。ワクチン接種を義務化した企業とそうでない企業の業績を比較すると、おそらく義務化しなかった企業の業績のほうがよいという結果が出るであろう。少なくとも経営陣の属性で、性別や人種が多様な企業の業績がよいという実証研究はある。よって、ワクチンの観点でもダイバーシティは大切なのだと思う。

ワクチン義務化の議論は、人々や経営者に選択を迫っているのかもしれない。あなたはどちらの道を選ぶのかということを。少なくとも選択肢がある社会が健全であるのは間違いないであろう。ワクチン接種しない人は「バカだ」といいきれる社会はなんとつまらないことか。