賛否両論あるインドの神秘主義者のオショー・ラジニーシの『あなたの魂を照らす60の物語』(大和書房、2019年)に示唆に富んだ物語がありました。
ある若い女性がオショーに尋ねます。「野心の根本的な原因はなんでしょうか?」
オショーは答えます。「劣等感、つまり不足感だ」
たしかに、劣等感と野心は真逆のもののように思えます。そしてこれらは相反するどころか、同じ感情の両極だそうです。一方の端にあるのが劣等感で、もう一方の端にあるのが野心とのこと。
野心を持ち、他人から見れば目もくらむような功績を成し遂げた者が、その内側では依然として苦しみ続け、さらに大きな成功に向けて進み続ける理由はここにあると。野心は人を中毒にしてしまうわけです。
たしかに、オショーの指摘のとおりなのでしょう。でも、日本の道徳や修身を紐解けば、血のにじむような努力をして物事を成し遂げることは良い事であり、推奨されます。「継続は力なり」とも言いますし、向上心があることを悪いことだとは言いません。
私はいつもこの矛盾の間で行ったり来たりしているかもしれません。どうしたら折り合いをつけられるのでしょうね。「足るを知る」という言葉も好きですが、その言葉を受け入れるだけでいいのでしょうか。思索の旅は続きます。