職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

日本も避けて通れないダイバーシティ

ダイバーシティと企業の業績に相関関係があるのかどうか興味深いところである。アメリカのあるコンサルティング会社の分析によると経営者の性別のダイバーシティが進んでいる上位25%の企業と、ダイバーシティが進んでいない下位25%の企業を比較すると、上位25%の企業のほうが明らかに業績がよいという結果が出ており、次の図表をみても年々その傾向が顕著になっている。2019年の例でこの棒グラフが示すものを説明すると、企業業績の中央値50に対して、上位25%の企業は55の業績を出しているということ。

比較的わかりやすい示唆としては、男性だけの取締役会よりも女性がメンバーとして参加している取締役会のほうが、会社の業績につながるよい経営判断ができることになる。

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ちなみに、この業績にはEBIT(Earnings Before Interest and Taxes、イービットと読む)という財務分析上の指標が使われており、税引前当期純利益に支払利息を加え、受取利息を差し引いたものになる。

さらに、民族や文化のダイバーシティは、性別以上に企業業績によい影響を与えることが次の図表から明らかになる。2019年の民族ダイバーシティの場合は、上位25%の企業が下位25%の企業よりも36%も業績がよいことになる。取締役会の構成について性別を意識する以上に民族や人種の構成に配慮すると、会社の業績がより良くなるということであろう。

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たしかに、取締役会に女性が加わることのメリットは、女性が消費者の購買行動や需要、そしてそれにこたえようとする機会を理解するという点があげられるのかもしれない。あるいは、異なる民族や人種の視点から大きな気づきや、自分の経験では得られなかった知見を獲得できるのかもしれない。

しかし、ダイバーシティが進んでいる企業の業績がよいのか、業績のよい企業がダイバーシティに取り組む傾向があるのか、どちらが先なのかは正直はっきりしない。実際、過去のいくつかの実証研究から、性別、民族、年齢等のダイバーシティが業績に与える影響はない、あるいはむしろ悪影響がある一方で、職務経験や教育経験等のダイバーシティは企業業績にとってプラスの作用が働く傾向があるという見解もある。

たしかに、性別、民族、年齢等に意識が向いている限り、それ自体が差別意識潜在的にあるのではないかともいい得る。純粋に職務経験や教育経験を基に組織を多様な人材で構成することで、最高のパフォーマンスを達成できるということもあるかもしれない。その結果として、性別、民族、年齢もある程度多様化した組織になっているということも起こり得るであろう。どちらを主眼にダイバーシティを目指すか、それは組織によって異なるのかもしれない。

いずれにしても、高齢化や少子化の影響はすさまじい勢いで、私たちの社会に迫ってくる。女性であろうが男性であろうが、あるいは高齢者であろうが、若年者であろうが、外国人も含めて国を回していかなければならないわけで、ダイバーシティというのは避けて通れないテーマである。私は、多様性のある社会や組織が好きである。自分の知らない世界がみれるし、気づきも得られるので、欠点より利点のほうがはるかに大きい。