職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

プーチン大統領の演説を通して視る世界観

9月30日に行われた、ロシアのプーチン大統領の演説の翻訳に接しました。東京都市大学名誉教授の青山貞一氏によるものですが、次のリンクは非常に興味深い内容でした。
プーチン大統領演説 2022年9月30日 全文日本語訳速報    kp.ru     ロシア語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授) (eritokyo.jp)

考えてみると私たちが入手できる情報のほとんどは、西側諸国のフィルターを通したものでしかなく、なかなかロシアの国のように政治的にも文化的にも距離のある国の人々の考え方を深く理解することができません。そういう意味では、ここに示された和訳は貴重な資料なので、時間のある時にじっくりと読んでみるとよいと思いました。

一部のみですが、なるほどと思える部分を以下に引用します。演説の中ほどに次の発言がみられます。

「欧米諸国は何世紀にもわたって、自分たちは他国に自由と民主主義の両方をもたらすと言い続けてきた。民主主義の代わりに抑圧と搾取、自由の代わりに奴隷と暴力である。一極集中の世界秩序全体は、本質的に反民主的で自由がなく、徹頭徹尾嘘であり偽善者である。

アメリカは世界で唯一、核兵器を2回使用し、日本の広島と長崎を壊滅させた国である。ちなみに、前例がある。

第二次世界大戦中、アメリカはイギリスとともに、ドレスデンハンブルク、ケルン、その他多くのドイツの都市を、軍事的必要性もないのに廃墟にしたことを思い出してほしい。そしてそれは、軍事的な必要性もなく、実証的に行われたのだ。目的はただ一つ、日本への原爆投下と同じように、自国と世界を威嚇することであった。

米国は、野蛮な「絨毯爆撃」、ナパームや化学兵器によって、韓国とベトナムの人々の記憶にひどい傷跡を残した。

今日に至るまで、ドイツ、日本、大韓民国などを占領し、対等な同盟国だと皮肉っている。聞け!どんな同盟なんだろう。これらの国の指導者がスパイされ、国家元首がオフィスだけでなく自宅まで盗聴されていることは全世界が知っている。本当に残念なことだ。それをする人も、奴隷のように黙ってこの野暮ったさを飲み込んでいる人も、恥ずかしくなる。」

たしかに、プーチン大統領のいっていることは事実なのでしょう。西側の指導者は、この点についてどのように弁明するのでしょうか。それ以上に重要な点は、多くの人々がプーチンのこれらの演説に耳を貸さないであろうということです。西側が貼った「悪党」というプーチンに対するレッテルに、一ミリも疑うことなく、この演説の真意は素通りされることでしょう。

私も含めて多くの人々は、大手のマスメディア、あるいはインターネットにおけるオルタナティブ・メディアを通して、とにかく自分の見えている情報がすべてであり、全体であると思い込みます。本当は、自分の見えている世界が全体なのか、部分なのか誰もわからないはずです。仮に一部分だと理解していても、それが全体のどこの部分なのか把握するのは非常に困難なほど、情報が氾濫しています。理詰めて徹底的に調べても何が正しいかなど、そう簡単にわかるものではありませんが、人は意外にどれが正しいかの価値判断をしがちではないでしょうか。

戦争を正当化する気持ちは微塵もありませんが、ウクライナが正義か、ロシアが正義かなどわかるわけがないと思います。そもそも、日ごろ夫婦喧嘩や親子喧嘩をしている私に、何かいえる資格もありません。また、私の浅薄な知識とつたない分析で出せる答えはないと断言してよいと思います。ある意味で、「わからない」というのが答えです。その点を踏まえて、もう一度プーチンの演説を読み直してみたいと思います。