スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

プーチン大統領は偽旗作戦のターゲット

善悪の価値判断を排して戦争と富について考えてみる。ウクライナの戦争について主要メディアは、反ロシア、反プーチン一色になっている。もちろん一部では、ロシアは共産主義勢力に押されて耐えきれなくなり、戦争に追い込まれたという説もあるし、プーチン共産主義勢力と結託して、軍需産業でひと儲けしようと企てているという説もある。しかし、どの説を取ったとしても、戦争で富を蓄積できる人たちがいるのは事実である。

ここで共産主義勢力というと、昔のソ連を思い出す人が多いので混乱するが、この共産主義は、いわゆる新保守主義義勢力のことであり、いわゆるネオコンNeoconservatism)のことになる。文字にすると「保守」となり共産主義とは対極にあるもののように思えるが、もとは左翼でリベラルな人が新しい保守に転向たということ。その新しい保守は、経済に関しては自由主義で、それだけにとどまらず、それを世界に広めようと考える。すなわち、グローバリズムで世界を均質化すること。世界を没個性の共産主義にするということである。よって「グローバリズム共産主義」という構図を頭に入れておく必要がある。

世界を統一のルールに基づき統制し、あらゆる取引は市場を通して行い、政府は介入させない。それぞれの国の伝統的価値観は徹底的に破壊され、ある特定の思想が刷り込まれ、一部の支配層によって世界の富を意のままにするという革命を世界に広げることになる。

そして、ネオコンが戦争から利益を得るには、二当事者が対立する構図を作るために、どちらかを挑発する必要がある。過去の戦争を振り返っても、冷静さを失わせるほどの挑発が必要であることは想像がつく。そして、この二当事者のどちらが勝ってもよく、双方にお金と武器を供与することによって儲かる仕組みができていることになる。

そんなひどいことをする人々がいるのか、ということであるが、お金を儲けて世界を支配したいという人々には、この方法が正しいと考えているので、そこに善悪の価値判断はない。もし、プーチンが挑発に抗しきれなくなり、戦争をはじめざるを得ない状況に追い込まれたとするのであれば気の毒としかいいようがない。あるいはネオコンと一緒にお金儲けということであれば、彼も同根だったということになる。

私たちはこの心理戦や情報戦に対して無防備になっていては真実がみえなくなってしまう。主要メディアだけから情報を入手していると、自分の考えも偏ってしまう。

馬渕睦夫『ディープステート』(ワック、2021年)によると、第二次世界大戦アメリカが参戦するのに国民感情を誘導する必要があったという。ドイツ兵が占領地で子どもを銃剣で突き刺したり、女性の腕を切断したり、妊婦の腹をかき割って殺したりという嘘の情報で国民感情を参戦に誘導した。

湾岸戦争は、クウェートに行ったこともない少女にイラク兵の残虐さを証言させて、国民感情を煽ってはじめた。ある種のPR作戦である(リンクの動画参照)。そして、イラクフセイン大統領は悪者に仕立て上げられたのである。

嘘から始まった湾岸戦争!自作自演の議会証言とPR操作! - YouTube

リビアカダフィ大佐も同じである。彼が統治していたリビアは、当時アフリカでもっとも発展した国で、福祉の水準も高かったという。カダフィこそリビアを第一に考え国を安定運営した名君だった。しかしアラブの春アラブ諸国に革命が伝播し、リビアも内戦に発展。その後、カダフィは反対勢力に殺害された。

このように、ネオコンが創作した偽旗作戦により悪役にされ、追い詰められ、最後は殺害された為政者がいる。スティーブン・M・グリア『非認可の世界』(VOICE、2021年)に、キャロル・ロジン博士の証言がある。彼女は1977年に航空宇宙産業のフェアチャイルド社に勤務していた。あるとき、彼女が会合に出席した。参加者は「回転ドアゲーム」に身を置く人々。あるときは軍人として、あるときはコンサルタントとして、あるときは産業界で働き、政府の要職に就くこともある。まるで回転ドアをグルグル回るように職を変えるが、常に利益相反関係のポジションに就いている。それで、各種許認可がスムーズにいったり、莫大な予算を獲得できることもあるのであろう。

そして、その会議では、多くの図表が貼りだされており、当時誰も知らなかったサダム・フセインカダフィ大佐の名前もあったという。結局、彼らは最初からターゲットにされ、悪役を演じることになっていたということである。ロジン博士は、その場で立ち上がって質問した。「すみません、なぜ建造する宇宙兵器の対象として、潜在的な敵について話し合っているのですか。現時点で彼らが敵ではないことはご存じでしょう?」と。しかし、誰も答えなかった。そして、彼女はその仕事を辞めた。そのような業界で働き続けることができなかったという。

このような背景を踏まえると、プーチンも同じ運命なのであろうか。今回ばかりは違う展開があり得るようにも感じる。時代は変わったのだと。もうお金儲けのための戦争で死ななければならない人はこれ以上増えなくてもよいステージに入っていると。