株式会社リクルートの創業期のメンバーに大沢武志さんという方がいます。私も存じ上げなかったのですが、労政時報4061号(2023年)の特集「人的資本の可視化・情報開示への対応」の記事の中にリクルートの事例が出ており、大沢さんの言葉に接することができました。
「人は自律的に行動し、自分らしく生きたい(≒内発的動機)と思う生き物である。内発的動機に基づいて行動する時が最もパフォーマンスが高い」という考えのもと、「個をあるがままに生かす」というもの。
1935年生まれの方で2012年に77歳で亡くなっていますが、昭和の時代に活躍されていながら明らかに当時の一般的な考え方とは異なる発想であることがわかります。
当時は目標数字が決められ、マネジメント層が部下に対して徹底的に点検・追及して、数字をやり切るという時代だったと思います。あのような時代に内発的動機に基づく行動の結果、最も高いパフォーマンスを引き出すなどということをいわれていたわけで、おそらく時代は追いついていなかっただろうと思います。
時代を先取りした大沢さんの言葉は、これから誰もが目指すマネジメントになっていくのではないでしょうか。経営者は従業員を常に監視し働かせて結果を出すなどというのは、かなりナンセンスになってくるでしょう。むしろ100%信頼して任せていかなければならない。
経営者自身は、株主から経営を「委任」されて、自らの裁量で自由に経営することができているのに、従業員には雇用という奴隷制度でモニタリングを通じて労働を強いていたんでは、辻褄が合わないわけです。従業員も自律的に行動し、ある程度の裁量の中で自分らしく働くことが必要です。その時、結果は後からついてくることになります。生き生きと自分らしく楽しそうに働いている人のところには、数字も人もエネルギーも近寄ってきます。結果は必ず伴うものです。
リクルートという会社が凄いと思うのは、自信に満ち溢れているところだと思います。私が読んだ記事によると、会社自体を出入り自由で、リクルートの垣根を越えて協働・協創を生み出す場に進化させていくため、Co-Encounterという意味で『CO-EN』という概念も創ります。公園という意味もあるようですが、人が集まる場の意味があるそうです。
注目すべきは、「出入り自由」という点。自信がなければいえないわけですが、去っていくのも自由なわけです。多くの優秀な人材を輩出している組織として際立つ特徴だと思いました。経営者は従業員が活躍する場を確保するだけで、余計な管理やモニタリングには依存しない。そんな経営がリクルートの真骨頂なのだと理解いたしました。