職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

「人はなぜ陰謀論にハマるのか」という常套句

久々にグレゴリー・サリバンさんのZoom会に参加しました。彼との出会いは、2021年の秋に、彼が運営する日本地球外生命体センター(以下「JCETI」)のセッションでお会いしたのが最初です。その後、自宅にも遊びに来ていただいたり、自分が博士論文の打ち合わせで神戸に滞在している同じタイミングで、偶然にも彼が神戸でイベントをしていたので、お会いしたりと不思議なご縁のある方です。グレゴリーさんのことは、グレッグさんと呼んでいますが、初対面の時から、以前どこかで会ったことがあるようなデジャヴュ(既視感)を感じていました。

JCETIとは名前のとおり、地球外生命体とコンタクトを試みている団体で、普通に考えれば胡散臭い組織といえるかもしれません。しかし、地球外生命体は存在しないという確証はないわけで、完全に否定することもできません。現代科学で説明できないことは、世の中にいくらでもあるので、私は「絶対」という言葉を「人は絶対に死ぬ」という時にしか使えないという姿勢をとるようにしています。よって、グレックさんの活動に対しても肯定的です。千年後あるいは二千年後の科学で証明することは可能かもしれませんし。

一方で、自分が知識人だと自覚している人たちが、現代科学で証明できないことに対して、「陰謀論」でかたずけようとする場面に遭遇します。本当にパターン化された論法で、人々を貶め、「陰謀論」より先に進むことがありません。つまり探究心がないということなので、実は恥ずべきことであるにもかかわらず、本人たちは気づきません。当然、自分はあらゆることを知り尽くしているという前提がそこにあるので、自分が見えていない世界が存在するかもしれないという仮説がないことになります。

最近では、Qアノン、新型コロナ人口削減説、爬虫類人ケムトレイルなど、古くはコックリさん、UFO、ケネディ大統領暗殺などありますが、これらに対して、「人はなぜ陰謀論にハマるのか」ということで嘲笑の対象とし、それ以上の探求あるいは議論を封じます。おもしろいように同じ手法です。もちろん、すべてが真実ということではないかもしれませんが、あらゆるテーマに対して心を開いておくことは大切だと思います。

そして、グレッグさんは『ホログラム・マインドⅡ 宇宙人として生きる』(キラジェンヌ、2021年)という著作の中で、陰謀論について興味深い見解を披露しています。CIAなどの諜報機関陰謀論という概念を作り、彼らが発信する情報の中に、真実と嘘を織り交ぜているので、本当のことを見破るのが難しいと。そして、少なくともQアノンなどは諜報機関の宣伝塔として利用されているので、大いに警戒が必要ということです。

そして、私たちが洗脳あるいはマインドコントロールから自由でいられるために、次のような情報には近寄らないことを示唆します。

① 唐突に登場し、目を引き話題となる
② 不正な情報をどんどん展開し、人々を巻き込む力が増幅する
③ 無責任な行動を極め、ダメージを片付けることなく消える

また、音楽や漫画、映画、ファッションなどを通して、ネガティブな情報が刷り込まれていることにも注意を喚起します。最近では、期限を区切って何か危機が起きるという情報にも、人々を追い込むための偽情報が含まれているのでまどわされないよう助言します。何事もなく期限が過ぎると、結局、ゴールポストを移動させ(move the goalposts)、次の商売ネタを作り出す輩もいるということです。

陰謀論」というのは便利な言葉で、あらゆる仮説は取るに足りない虚偽ということで片付けることができます。そして、それは人々を思考停止に追い込む便利な用語でもあります。陰謀論と決めつける人たちは、どれだけそれらの情報を分析しているでしょうか。私であれば先ほど述べた陰謀論をすべて検証するには、膨大な時間と労力が必要なので、自分にはできません。ということで、せめて判断を保留にします。

グレッグさんの著作も、普通に考えると理解は困難です。あらゆる人にお勧めできるということではないでしょうが、陰謀論を少しでも理解したい人には、「人はなぜ陰謀論にハマるのか」という定型文を使用する著作よりも気づきは多いと思います。