憲法の問題はなかなか答えが出ないテーマです。改憲派と護憲派、保守と革新、保守とリベラルなどいろいろな対立の構図ができて、議論は常に平行線をたどります。私の現在のポジションは、日本国憲法のままでいいという立場です。
理由は、たとえ自主憲法ではないとしても、今の日本にとっては都合がよい憲法になっていると思うからです。自主憲法ではないといっても、日本人によって、日本国憲法の土台となる条文は、いろいろな角度から検証され、今の憲法に生きているので、ある意味で自主憲法でもあると思うのですが。特に人権保障はしつこいぐらい多様な条文が規定されています。また、いつも議論になり結論が出ない憲法9条も今の日本にとっては望ましいのかもしれません。そう思わせる意見に接したのでご紹介します。
渡辺惣樹=茂木誠『教科書には書けないグローバリストの近現代史』(2022年、ビジネス社)において、渡辺惣樹氏はご自身が自主憲法派であるものの、イラク戦争の裏の動きに気づいてから、徐々に考え方が変わってきたそうです。保守派に怒られることを覚悟し、「アメリカがつくった憲法」という形で残して、参戦すべきではない戦争には行かない口実にできると思ったそうです。
アメリカを信用できないのも9.11のテロからも明らかといいます。わずか二機の飛行機で、超高層ビル二棟を崩壊させる芸当が、ビン・ラディンにできるわけがありません。もう一棟の7番ビルも火事だけで崩壊しています。9.11テロ事件は、他にも論理的に説明できない事象が多すぎるといいます。
いずれにしても、イラク戦争で自衛隊が戦闘に参加しなかったのは正解だと指摘します。当時、9.11テロにやらせの可能性があることなど思ってもみなかったわけですが、渡辺氏は歴史家になってアメリカの狡猾さを知ってからは、アメリカにNOと言いやすい、アメリカ製憲法の逆利用もありだという考えのようです。私も渡辺氏の意見に同意します。
思想家のマキャベリは彼の著書の『君主論』の中で、君主にとって人々の分裂は大変有用なものだと述べます。そして君主への助言をします。まずは一番に、分裂した都市の信頼を勝ち取ること。殴り合いにならない間は当事者の調停者になり、殴り合いになったら、遅ればせながら弱い方を支持すること。どちらの場合も、当事者に抗争を続けさせ、疲れ果てさせることが狙いです。
マキャベリの考えは次のとおりにまとめることができます。
1.策動者に矛先が向かないように、民衆の間に対立や問題を起こさせ、互いに戦わせよう。
2.紛争の扇動者としての本当の姿は隠したままでいよう。
3.戦う当事者の双方を支援しよう。
4.紛争を解決できる篤志家とみられるようにしよう。
現在起きているウクライナ紛争、過去の第一次世界大戦、第二次世界大戦など、あらゆる戦争は仕掛け人がおり、両陣営に武器と資金を供給して、さらに儲ける人たちがいるということでしょう。このようなことをいうと「陰謀論」というレッテルを貼られるわけですが、こういうのがカウンターインテリジェンスといい、真実の情報を無効化するための防諜活動の一種なのだと思います。真実を隠蔽するための陰謀論が無数に存在しているわけで、その陰謀論をかき分けて真実にたどり着くことが大切です。今は比較的情報開示が進んでおり、陰謀論を見分けやすくなってきていると思います。一方で、あらゆる疑惑に対して、陰謀論というレッテル貼りをして片づけてしまう人が多いことも残念なことです。