スペシャリストのすすめ

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ワクチン懐疑派の論文は意外に多い(5)

Neil Z. Miller, Miller's Review, Miller’s Review of Critical Vaccine Studies (2016)には、400本以上の論文要旨が掲載されていますが、私が紹介できているのは、その5%以下です。それぐらい多くの論文が存在しているにもかかわらず、ほとんど世間に紹介されることはないようです。この点についていえることは、一言に尽きます。「資金力」です。資金力があれば、どんな論文も表に出てくることができる。そして、資金力があれば、その論文が表に出てこないようにすることも可能であろうと思いました。医学や薬学の論文に特有のことかもしれませんが、重要な点だと思います。

本題の論文ですが、まず中立であると思われている、アメリカの公衆衛生機関のCDCに関する論文をみてみましょう。

Lenzer J, Center for Disease Control and Prevention: protecting the private good? BMJ 350, h2362 (2015)

CDCは製薬会社との間に金銭的な取引はないと主張していますが、これは事実ではありません。1992年、米国議会は、CDCと産業界の関係を促進するために、非営利のCDC財団を設立する法案を可決しました。そして、製薬会社はCDC財団に寄付をしています。CDCは、企業やCDC財団から毎年数百万ドルの「条件付資金」を受け取っています。さらに、CDCが製薬会社の利益に影響を与えるような研究を行った場合、製薬会社はCDCを罰することができます。産業界からの資金提供は、治療法の推奨や研究結果に偏りを持たせるものであり、公衆衛生機関として容認できるものではありません。CDCが産業界から資金を得ているという事実は、CDCにもっと倫理的になるよう、利益相反を避けるよう求めても解決しないことを示しています。そもそも、アメリカの立法者がこの問題をもたらしたのであり、問題を解決するために新しい法律を作るしかないのです。

次にHPVワクチンに関する論文をみてみます。

Brinth L, Theibel AC, et al., Suspected side effects to the quadrivalent human papilloma vaccine, Dan Med J 62(4) A5604 (2015)

この論文では、HPVワクチンによる神経系の副作用が疑われる53名の女性患者を調べ、その共通する症状について述べています。デンマークでHPVワクチンの接種プログラムが開始された後、一部のワクチン接種者に自律神経系の不調を示す一連の症状が現れはじめます。症状としては、頭痛、起立性不耐症、失神、疲労、認知機能障害、不眠、光に対する過敏症、腹痛、神経障害性疼痛、胸痛、震え、痙攣、筋力低下、歩行困難、生理不順、ドライマウス過呼吸などが挙げられます。HPVワクチン接種後,全員が2カ月以内に発症したと報告しており、ワクチン接種から発症までの平均期間は11日でした。症状が出る前、この患者たちは高いレベルの身体活動をしていましたが、症状が発生した後、98%が日常生活を続けることができず、75%が少なくとも2ヶ月間、学校や仕事を中断しなければなりませんでした。HPVワクチン接種後、筋力低下、疲労、痛み、月経障害などの自律神経系へのダメージが一貫して報告されています。

Little DT, Ward HR, Adolescent premature ovarian insufficiency following human papillomavirus vaccination: a case series seen in general practice, Journal of Investigative Medicine High Impact Case Reports 2(4) (2014)

本論文は、HPVワクチン接種後に早発卵巣不全を発症したオーストラリアの10代の若者3人の症例について述べたものです。HPVワクチン接種後の3名の少女における早発卵巣機能不全の診断は、ワクチンの対象となる若い女性の将来の出産や生殖に関する健康に影響を与える可能性があります。早発卵巣機能不全の女性のほとんどは、初期症状として月経周期の変化がみられます。そして、現在のHPVワクチンの安全性研究は、卵巣の安全性を判断するのに十分ではありません。結局、HPVワクチンを接種した少女と接種していない少女の月経パターンのコホート研究は不可欠であり、商業的利益とは無関係に実施されるべきことが提言されます。

新型コロナ・ワクチンではいろいろな混乱がみられますが、既存のワクチンでも大いに議論されるべき課題が山ほどあることがわかりました。しかし、その点真剣に議論しようとすると、必ず潰されてきたのが過去の歴史なのかもしれません。研究者は変人扱いされ、社会的評判も落とされて出世も難しいようです。ワクチン推進派とワクチン懐疑派では、圧倒的に前者が有利なのは、その資金力の点で明らかです。潤沢な資金提供を受けられる研究環境とそうでない場合では、結果はおのずと明らかです。しかし、お金だけが人間を動かす原動力ではない、ということは、今の状況をみてもわかります。地位や名誉を捨ててでも、真実を探求している研究者がいることに安心感を感じます。ぜひそのような方々の実力が発揮できる環境が整うことを願うばかりです。