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一般書の出版は専門書より難しい

一般書の『学び直しで「リモート博士」』(アメージング出版、2023年)とほぼ同じタイミングで博士論文を書籍とした専門書『先端的D&O保険の実効性と限界』(保険毎日新聞社、2023年)も発売されることになりました。
Amazon.co.jp: 先端的D&O保険の実効性と限界 : 山越誠司: 本

こちらは誰でも読めるというより、一部の必要としている方のみが対象になります。損保業界の企業分野の方や、企業法務の弁護士、大学の研究者、事業会社の保険担当者等、本当に一部の人にしか価値がないものです。それ以外の方には「無価値」といっていいくらい。それでも一般書は1,320円で、専門書は4,180円です。必要な人は、高くても購入せざるを得ないので価格設定が高くてもよいのでしょう。値段は出版社側で設定します。

今回の専門書は、約25の出版社に相談し、やっと保険毎日新聞社で合意に至りました。それ以外は、自己負担150万円であったり、その金額分の買取り条件があったりと、かなり厳しい条件を提示されました。それならまだいい方で、まったく回答せずに無視されたケースも5社ありました。

このように専門書の出版は困難を極めるのですが、一連の出版企画の中で、実は一般書の方がはるかにハードルは高いということを理解しました。一般書について相談した出版社は15社です。2年前に別の本で相談をして回答がなく無視された7社は、最初から除外しました。よって、私も含めて普通の人にとって一般書の自己負担なしでの企画出版というのは不可能と考えて良いと思います。回答のあった会社の中には、300万円~350万円程度の自己負担を提示してきたところもあります。専門書で150万円、一般書で350万円が相場なのでしょうか。わかりません。

今回の一般書も、誰でも読めるという意味で想定される読者の層は広く厚いでしょうが、どれだけ売れるか想定できない難しさはあります。その点、専門書は、限られた読者層であるものの、販売部数が読めます。1000部発行して、600~700部販売できればまずまずだと聞きました。損保業界の人で○○冊、弁護士で○○冊、研究者で○○冊、事業会社で○○冊と積み上げていけば売上予測ができますね。一般書では、そのような売上予測が難しいのでしょう。よって、専門書以上に一般書の出版は難しいのだと思います。