スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

東京勤務の人材は地方勤務より優秀なのか

タイトルに対する私の答えは、声を大にして「そんなことはありません!」です。

私は大学院修了後、損保会社に勤務していましたが、在職期間中はすべて地方での営業職でした。東京の本店勤務という経験は皆無です。私が入社したのは、1993年で同期の総合職が90名いました。ところが、バブル崩壊の煽りを受けて、空きポストがなくなり、研修後に配属先が決まらなかった人が89名もいました。そうです、正式配属が2名のみという何ともすごい時代です。それだけの余剰人員を抱えられる会社もすごいですが。

正式に配属されなかった、89名の余剰人員は、各自の実家から一番近い拠点に仮配属ということで、毎日会社へ通うことになりました。私の場合、実家が札幌市なので、札幌支店に仮配属となり、2、3か月くらい勤務したのではないでしょうか。その後、青森支店弘前支社に空きができて転勤となります。

地方の営業というのは、社有車で保険代理店を巡回するルート営業です。保険代理店や保険契約者は中小企業が多く、ときには社長とやり取りすることも多いです。そして、多くの場合、自分の判断でビジネスを進めていきます。よって、判断力や度胸はつくと思います。

一方、本店の営業は大企業が顧客であることが多く、相対する人も一担当者ということが多いでしょう。社長に会うなどといことはほとんどありません。そして、大事なビジネスは、おおむね部長クラスの人が動いて決まるので、自分ができることは限られています。

このように考えると、若い時ほど地方勤務で中小企業を相手に仕事をするというのは、実力をつけるうえでとても有用だと思います。本店営業というと聞こえがいいですが、せいぜいカバン持ち程度の仕事ではないでしょうか。

多くの若者は、地方営業を嫌がり、本店営業をエリートだと勘違いするようです。しかし、将来のことを考えると、喜んで地方営業も経験したらよいと思います。また、本店勤務になると、自分の実力ではなく、会社の実力に依存することが多くなるので、自立が遅れることがあります。自分がエリートだと思い込み、尊大になる人もいるでしょう。

損保会社では地方勤務しか経験しませんでしたが、金融サービス会社で本店勤務を経験しています。両方の経験からして、地方の人材と東京の人材を比較しても、東京の本社の人材の方が優秀などということはありません。地方にも優秀な人はおります。そして、地方勤務を経験すれば、ビジネスは東京だけで回っているわけではないということも実感できます。ですから、地方勤務の経験はとても貴重だと思います。本社ではないから、ということで落胆する必要など一切ないことを強調しておきます。