スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

監視される側から監視する側へ移行しよう

未来の労働市場を考えたときに大切なキーワードとして「見える化」があると考えたことがる。労働市場も含めてあらゆる取引は、誰もがみえるようになる。ありとあらゆることに透明性が増し、物事を隠すことができなくなる。不正な取引や不公正な駆け引き、情報の非対称性を利用した搾取など一切できない社会がくると。とにかく今後は「見える」という性質が大切にされ、多くの人が納得いく取引が成立するようになる、と考えた。

しかし、現実の社会をみたときに「見える」という性質は監視社会と同一だとも思われた。私たちは管理され、監視される存在として生きていくのだろうか。現在、飲食店は徹底的に叩かれ、中小企業は再編して大規模化すべきという議論も盛んである。そうすると、世の中は大企業だらけになり、中小企業が存在することによる多様性などなくなる。多くの労働者は大企業で働くようになれば、社会経済が効率的になるのかもしれないが、一方で労働者は搾取の対象になる。

大企業が経済成長し続けるサインは、株価をみていてもイメージできる。ほったらかしで投資信託をやっている人がいれば、数年継続して元本が100万円の人でも、20万円程度の含み益が出ていることもあるだろう。元本が1億円の人であれば、2,000万円の含み益である。この2,000万円は不労所得なので、いかに富裕層がより豊かになっているか想像はつく。

しかも投資信託の投資先は上場会社である大企業なわけで、中小企業ではない。中小企業に未来がないとしても、大企業に未来があるということで、実態経済とかけ離れていはいるが、将来の大企業の業績を織り込んでの株高なのかもしれない。

このように、大企業はますます業績がよくなっていくかもしれないが、そこに組み込まれている労働者は、おそらく豊かになるよりも搾取されるであろう。これからの労働者はピラミッドの中にいても搾取されない方法を考える必要がある。しっかり学び、搾取されないスペシャリストになっておく必要がある。

また、大企業に所属するのが嫌な人は、独立するかもしれないが、単独では難しい。そこで、フランチャイザーになればよいという選択肢もあるが、コンビニのオーナー(所有者)になっても、今度はロイヤリティを本部に支払うことで搾取されることになる。このように、どう考えても世の中が監視社会化して、どんどんピラミッドの中に私たちが組み込まれていっているような気がしてならない。

しかし「見える化」の議論のように、すべての取引が「見える」ようになると、実は、監視される側にも、監視する側にまわれる可能性が出てくるかもしれない。すなわち、監視していると思っている経営者や資本家は、実は労働者からあるいは市民から監視されることになるわけである。そんなことが可能であろうか。技術革新が進んで、監視する側の予想を超えた進歩を遂げたときにはあり得るシナリオではないだろうか。透明で公正で一切の悪事は隠し通せない世界である。経営者や資本家が作ったスキームは完全に情報開示される社会である。すべてはディスクローズされることになる。

しかし、そのような一切不正ができない理想的な社会に到達する前に、一度、監視社会を通過するのかもしれないとも思った。今は間違いなく、人々が自分の人生や生活の選択権を奪われた状態になっている。飲食店の営業時間短縮の議論、マスク着用は義務か任意かの議論、ワクチンが任意か強制かの議論等、あらゆる選択権は私たちから奪われたような状況になっている。しかし「見える化」が進めば、今は傲慢に労働者や市民に対して指示を出している人たちは、監視される側に立たされることになる。

支配者はそんな不用意なことはしないと思うかもしれないが、それは私たち一人ひとりがどのような社会を望むかしだいではないだろうか。あきらめてはいけない。科学技術は人々がどのように使いたいかによって、その使われ方も変わってくる。まだ、表に出てきていないフリーエネルギーのような技術も実用化されるかもしれない。ポジティブな理想社会をイメージしながら日々過ごすことで、多くの人にとって理想的な社会の実現も夢ではない。できるだけ多くの人がそのことに気づいて目覚めることが必要なのではないだろうか。