職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

中世イスラーム世界の発展にみる希望

コロナ禍により人の流れが止まり、経済も停滞していくなかで、これから世界はどの方向に進むのであろうか。経済に関しても文化の発展に関しても、先行きが明るくない印象を持つ人は多いと思う。しかし、中世におけるアラブ世界の発展の様子をみると、意外にも人類のたくましい意志と行動力から、われわれは次のステージに進化していくであろうことを感じられた。どうしてそう思えたのか。

中世におけるアラブ世界の繁栄は非常に有名であるが、なぜヨーロッパが経済的にも文化的にも停滞していた時代に、中東が大いに発展したのかは興味深い。その理由を探ると次のようなことがあった。

まず、中東イスラーム世界では厳しい気候のために農業が難しい。かろうじて必要な雨量が確保できる地域は、レバノンなどの海外地域や北アフリカの地中海沿岸地方などわずかな地方に限られ、それ以外の地域は灌漑を行わなければ農耕ができない。

坂本勉『イスタンブル交易圏とイラン』(慶應義塾大学出版会、2015年)によると、灌漑すらできない砂漠では、農業以外に生活の糧を得なければならず、遊牧という生活様式が中東イスラーム世界に広がったとする。そして、中東イスラーム世界は雨が多い地域には農業が、少ない地域には放牧が、それぞれの生活様式となり、分業体制ができあがった。

このような農村と遊牧社会とのあいだでみられる判然とした分業の状態は、それぞれの社会において生産できないものに対する渇望を強め、これが原動力となって市場が形成されることになったという。

ちなみに、中東イスラーム世界が古くから国際的な中継貿易を通じて経済的に繁栄できたのは地理的な要因もあったようである。インド洋と地中海という二つの海域に挟まれ、アジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸の結節点に位置する地理的優位性が、各地を結ぶ国際的な中継地になり商業が発展したものである。

今、われわれは外の世界との交流が断たれ、閉ざされた空間で時間を過ごすしかない。世界の観光業界や航空業界、ホテル業界は大打撃を受けて、立ち直れないほど衰退してしまった。著名な投資家のウォーレン・バフェット氏もエアラインの株を売却し、自らの投資戦略を変更している。

しかし、中世における中東イスラーム世界における経済発展や市場形成の原動力をみると、自分にないものに対するあこがれや渇望というものが、人類の歴史を動かす原動力になることがはっきりと理解できる。自分の知らない文化へのあこがれ、自分が持っていないものに対する欲望、自分が経験したことがない体験への意欲、自分がみたことがない景色をみたいという願望、もっと卑近な例では、男女が惹かれあうのも似たような源泉なのではないか。このように考えるとコロナごときで人類は未来への営みを停止したり、あきらめたり、回避したりすることはないであろう。

いずれにしても、様々な自粛の要請をしようが、人流を止めようが、飲食店の営業時間を短縮しようが、人類は必ず新しい活動をはじめて、さらなる繁栄を手に入れると思われる。いや、すでに行動をとりはじめている人は多いと思われる。

私自身もコロナ騒動に関係なく、次のステージへ進みだしている。しかも複数の試みをはじめた。過去の常識であれば無謀かもしれないが、過去からの延長線上に解はない。「やってみなはれ」の精神でいくつもの試みを同時進行で進めてみたいと思う。間違いがなければ、宇宙が味方してくれるであろう。間違いがあれば軌道修正してくれるであろう。出てきた結果を静かに受け入れるだけである。