3月末に米子、松江、出雲へ家族と一緒に旅をした。やはり旅行をすると様々な発見や気づきがある。外出自粛もほどほどに、そろそろ旅に出ることをお勧めしたい。
私としてはどの街も初めての訪問であったが、まず気がついたことにホスピタリティというものがあまり感じられなかった。JRの職員、ホテルのスタッフ、バスの運転手、レストランのスタッフ、いずれも首都圏で体験する顧客対応よりもあっさりしていた。地域的特性なのか、コロナで疲れているのかわからないが、顧客を心地よく迎える感じではなかった。
商店街は閑散としており、人口減少はどうしても止められない印象はぬぐえないといったところである。出雲大社の参道も近代化され、昔の風情がないのが少々残念であった。タクシーの運転手の話によると、世代が変わり地元の人が経営していないそうで、行き詰ればすぐに撤退してしまうであろう。おそらく、ここで有能な市長や知事が出てきても、人口減少の流れは止まらないであろうし、衰退するのはやむを得ないのかもしれない。ただ、山陰地方という地理的優位性を生かして、韓国や中国からの観光客を招くことはできそうな感じはする。
一方、ポジティブな印象をもった点は、地方都市の心地よさというのがあった。人混みがなく基本的な都市機能は備えており、街並みに落ち着いている。とくに松江は風情があり、小泉八雲が愛した街というのは理解できた。お城も天守閣が残っている点で、かなり売りになる。武家屋敷や庭園も存在し、日本の伝統が活き活きとして残っている。
羽田空港から1時間20分の飛行時間で行ける地域であり、予想以上に近く、日本の風情に触れることができる。首都圏に住んでいると、そこがすべてのように思えてしまうが、地方でたくましく生きている人もいるし、多くの文化遺産が存在して、食文化も豊かなこともある。また、米子には高島屋百貨店が存在していることに驚き、日本で最古の客車が街中の公園に展示されていた。日本で最古、日本で唯一、日本でトップなど、東京よりも秀でた点をみつけられるのは楽しい。
これからの地方都市は、東京を経由せずに直接世界とつながるとよいと思う。姉妹都市なども人の縁などを使えば、意外に提携先はみつかるのではないか。それによる経済効果の計測は難しいであろうが、住んでいる人同士が交流しつながりを感じるだけでも、人々の世界観は広がると思う。
昨年春の緊急事態宣言直前の奈良旅行についても学びが多かったが、人生を変えるほどの衝撃は得られないとしても、日本の地方の良さをしみじみと感じることができるのはよい。そして、自分が自治体の長であればどんな施策を打つのか、自分がここで事業をするならどのように展開するかなど、勝手に夢想することになるので、やはり旅の効用は日々の考えを豊かにするという点でもあると思えた。