職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

「新しい生活様式」から普通へ回帰する

人口4,000名のフランスの村に住む家族が新型コロナウイルスに感染した。その後、重症化することもなく自然に治癒した。はるかに人口密度が高い首都圏の人々が感染していないといえるのだろうか。多くの人にとっては「無症状の風邪」といえる新型コロナウイルスでは、みんな病院にもいかずに自然治癒しているのだと思われる。

本間真二郎『感染症を恐れない暮らし方』(講談社ビーシー、2020年)によると、すぐに病院に行かないことの大切さが強調される。本間氏はウイルス学の専門家であるが、医師を疲弊させ医療費を増大させるという負の観点からも、症状が軽いのであれば医療機関には行くべきではないと指摘する。そもそも病院に行ったところで、薬を処方されて終わりである。そして、抗生剤も解熱剤も使わないことが大切と説く。

抗生剤は細菌感染症の治療に使うものでウイルス感染症にはまったく効果はない。また、感染を防止し免疫の働きを調整しているのは体内の常在菌であり、とくに腸内細菌になる。抗生剤は効果がないどころか、その腸内細菌に深刻なダメージを与えてしまう。解熱剤も使うべきではない。体温が上がると免疫が活性化する。発熱は病原体によるものではなく、免疫反応を高めるための自己防衛機能による症状なので、解熱剤で熱を下げてはいけないのである。

それでは、病院に行くときはどのようなときか。①呼吸困難の症状がある、②倦怠感が強くぐったりしている、③水分がとれない、このようなときにはじめて病院に行くべきことになる。そして、現代人は腸内細菌など必要以上に排除しているので、自然免疫系で対処しきれない場合に登場して、うまく機能するはずの獲得免疫系が暴走しやすく、その結果、重症化してしまうという。

宮坂昌之『免疫力を強くする』(講談社、2019年)でもインフルエンザなどですぐに病院に行くことは避けることを指摘している。かえって感染の機会が増えるので、それより水分をとってよく休むこととしている。

このようにみていくと、なにも特別な対処法があるわけではないことがわかる。さらにワクチンに関しても、インフルエンザでは「抗原ドリフト」や「抗原シフト」という現象でウイルスが変異してしまうので、ワクチンの効きが悪いことが認められる。まったく効果がないのでワクチン接種を推奨しないとまでいわないが、個人のレベルでワクチンが「効いた」という実感がないのは、この抗原性の変化を正しく予想できないので、ワクチンに当たり外れがあるということになる。また、国が備蓄しているタミフルリレンザも副作用を考えると服用は推奨されない。これらのことは変異のはやい新型コロナウイルスでも同じなので、ワクチンに対する過度な期待はしないほうがよいことになる。

それでは、われわれにできる対処法はなんだろうか。とにかく自然に振る舞うこと、普通の生活に戻ることだと思う。高齢者も普通の生活に戻し人生を楽しんではどうだろうか。新型コロナウイルスが恐いということで、残りの人生をビクビク過ごして充実した生涯を送れるだろうか。残り少ない人生を自然の中で深呼吸して、生きているという充実感を思う存分味わうべきである。運悪く重症化するならそれが寿命である。

若い人は重症化する人のために安易に医療機関に行かないことである。症状のでない風邪と思い自宅で安静にしていればよい。子どもたちは大いに遊ぶべきである。友達にも会わず、毎日マスクをして、おしゃべりもできないなんて、子どもの精神にいかほどの悪影響があるのかはかり知れない。大好きなおじいちゃん、おばあちゃんも、そんな孫がかわいそうなはずである。孫からうつされたウイルスであの世に行ければラッキーだ、くらいの気楽さも必要ではないか。インフルエンザ流行時よりはるかに過剰な対処に合理性があるだろうか。不自然な生活をやめて平常時の生活に戻り、人生を大いに楽しんだらよいと思う。

ただ残念ながら今は人によってみえる風景が二極化してしまっているのかもしれない。まったく平常通りの人、危機感いっぱいの人。一方、冷静に考えると日常の風景はコロナ前もコロナ後も同じはずである。90%以上の人がマスクをつけているという異様な風景はあるが。そして、新型コロナウイルスが例年のインフルエンザよりはるかに強毒で、今のような対処が絶対に必要である確たる証拠はない。コロナウイルスは風邪ウイルスの一種でしかないのに、「新型」がつくととてつもない感染症のように思えてしまう。でももう一度、多くの人にとっては症状のでない風邪であることを思い出し、次の楽しい計画でも立てたらよいと思う。そうすることで免疫機能も活性化するのではないか。