スペシャリストの生き方

自分だけの生態学的ニッチで生きる

英語学習から多言語学習へ

よく英語学習にCNNが良いのかBBCが良いのかという話があるが、社会人にはとくにBBCをお勧めする。アメリカ英語が良いかイギリス英語が良いかという視点からそのようにいうのではない。そもそも日本人にとってはアメリカ英語でもイギリス英語でもどちらでもよい。世の中、オーストラリア英語もシンガポール英語もインド英語もあり、いずれにしても英語であることに変わりはない。問題は内容である。BBCは公共放送なので民間放送のCNNよりも客観的であること、植民地経営の影響なのかより国際的であること、解説や分析もより深いことがいえるので、成熟した大人にとってはBBCのほうに興味がわくと思われる。

さらに、日本人が海外の情報を接するときは、どうしてもアメリカのフィルターを通していることが多いので、自然に蓄積された海外情報に偏向がある。それを修正するためにもFRANCE 24やアルジャジーラを視聴するのもよい。FRANCE 24は公共放送で、アルジャジーラカタール政府の資本が入っているが独立性を維持する努力はされているようで、どちらもアメリカと異なるフィルターで世界を見ることができる。フランスは、アフリカや中東とのつながりも深いので、それらの地域の情報も豊富であるし、アルジャジーラはもちろんアラブ世界の情報が豊富である。しかも報道の自由が制限される地域で果敢に挑戦しているユニークな放送である点、視聴する価値は高い。

これら、FRANCE 24とアルジャジーラは英語版もあるが、現地語で視聴できたほうが世界は広がる。よって、ある程度英語学習が進んだら次の言語に挑戦すべきである。もちろん、英語学習が重要なのは理解できるが、あくまでもビジネスに便利であることはいえるが、言語学習は文化を学ぶという視点で考えると、働きすぎ日本人が英語圏の文化から学び得るものは、そんなに多くはないと思える。人生における価値観や、お金に対する価値観、顧客重視の働き方などに関して類似点が多い。よって、日本人が英語圏から学び、人生にイノベーションを起こすのは難しいように思う。

一方、ラテンやアラブの世界のほうが、日本とは遥かに異なる文化を持っているので、その文化に接したときの衝撃は大きい。だから人生観を揺さぶるような学びも多い。ユーモアのセンスもかなり違う。そして、最も大切なことは多様性を維持することである。発想の柔軟性を維持して世界観を硬直させないことが人生の過ちを回避する重要な鍵になる。江利川春雄『英語と日本軍:知られざる外国語教育史』(NHKブックス、2016年)によると、第二次世界大戦前の陸軍大学校の学生の留学先は陸軍大国のドイツやフランスであった。結果的に、アメリカやイギリスを軽視する人材が軍の中枢部を占めるようになり悲惨な太平洋戦争に突入して敗戦している。外国語教育の偏向は世界観の偏りと硬直化を招き、柔軟な発想を失わせる。お金を稼ぐために英語を学ぶことは仕方ないとしても、自分の人生観までも英語の世界に奪われてしまわないように注意したいものである。