職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

40歳でメンバーシップ型から職人型へシフトする

スタンフォード大学の経済学者エドワード・ラジアーによる「ラジアーの法則」は、日本の大企業の賃金カーブをうまく説明しています。しかし、元々は定年制が違法ではなかった1979年当時のアメリカ企業の賃金カーブを説明する理論でした。シカゴ大学のリポジトリから論文は17ドルで入手できます。
Lazear, Edward P. "Why Is There Mandatory Retirement?" Journal of Political Economy, 87(6).
https://www.journals.uchicago.edu/doi/epdfplus/10.1086/260835

20代〜30代(過小支払期):生産性(緑の線)よりも実際の賃金(青の線)が低く抑えられています。

40代(転換点):賃金と生産性がちょうど一致し、これ以降は関係が逆転します。

50代〜定年(過大支払期):生産性を上回る高い賃金が支払われます。若い頃の「貯金」を会社が後半に払い出す仕組みです。

この法則で注目されるのが、40代以降は「もらいすぎ」という点です。だから40代以降の賃金を下げましょうという理屈にも使われます。そこで、労働者がこの理屈をくつがえし、賃金カーブを維持するにはどうしたらよいのか。

まず、20代~30代ではメンバーシップ型で働き、その間に専門性を磨きます。その後、40歳で職人型にシフトして生産性を上げ、「もらいすぎ」とか「働かないおじさん」といわれないようにします。また、早めに自分の専門分野が決まった人であれば、35歳でシフトすることも可能です。

専門性を活かして働く職人型の職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)は、おおまかな業務内容のみ記載し、最後に「これらに関連・付随する業務」と記載します。まるで会社の定款の目的にある、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」に似ています。

このように記載しておくと、「これはわたしのジョブではないのでやりません」ということにはなりません。ある一定の仕事を隣の部署や、異なる専門性のある同僚と協力しながら業務遂行します。

大切なのは、自分の専門性が活きる業務は何でもやりますということです。専門性を活かせれば生産性も高いので、「もらいすぎ」ということにもなりません。何か仕事が降ってきても、自分の専門分野である限り、おおむね仕事の出口が見通せるのでストレスもありません。

会社も生産性が上がり、ミドル・シニアも賃金を維持できるので、双方にとってメリットのある仕組みです。伝統的な日本的雇用慣行にも適合するのではないかと思いました。