職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

「職人型社員」はミドル・シニアにとってお得だった

太田肇『離職ゼロ。「自営型社員」が会社を変える!』(東洋経済新報社、2025年)を読了いたしました。偶然、書店で見つけて手に取った本ですが、自営型社員(わたしは職人型社員と呼びます)は、まさしく自分が30代前半から取り組んできた働き方でした。

わたしは30代前半に独立したいと思っていました。なぜそのように思ったかというと、インド旅行した際に、占星術師に34歳で独立するといわれた、ということが理由になります。かなりいい加減な理由ですが、34歳に近づいても独立できる気配はありませんでした。

しかし、34歳の時にオリックスに転職できる機会があり、普通の総合職と契約型のスペシャリスト職を選択することが可能でした。そして、スペシャリスト職を選びました。そこには、いつか独立できればという思いがあったのだと思います。

契約型といっても、業務委託契約や委任契約などではなく、あくまでも雇用契約で、自分の専門性を生かして働くという就労形態になります。そして、この働き方が太田氏のいう自営型社員とかなり類似していることに気がつきました。

世の中で、メンバーシップ型とジョブ型の二項対立する概念がありますが、どちらもう行き詰っているようです。伝統的な日本のメンバーシップ型の組織に、おもにアメリカから輸入されてジョブ型を取り込んでも馴染まないのでしょう。その点、自営型はジョブ・ディスクリプションにかかわらず、まとまった仕事を一人で責任を持ってやることになり、ある意味で職人的な働き方になります。

よって、自営型あるいは職人型は自己完結型の働き方になります。1つの仕事を複数人でやるわけではないので、チームワークが軽視されるという恐れもあるかもしれませんが、ジョブ型と異なり、自分だけでは達成できない仕事は、隣の部署とも積極的に連携しながら業務遂行します。自分の業務範囲を超えて働くことだってできます。「それは自分のジョブではないのでやりません」、というわけではありません。

この職人型の働き方は、ミドルやシニア世代に導入されるといいと思いました。年齢を重ねても実務能力が磨かれるし、定年退職後の起業の助走期間にもなると思います。65歳定年制が一般的になってきた昨今、会社にぶら下がってやり過ごすには40代、50代、60代と長い期間ぶら下がることになり、本人も会社もつらいことでしょう。

そのように考えると、高齢化が進行し、生産年齢人口が減っている日本社会で、職人型社員として生きていくことは合理性があってお得ではないかと思いました。