養老孟司『人生の壁』(新潮新書、2024年)を拝読いたしました。人は人生において壁に何度かぶつかるものです。大きな壁、小さな壁など様々でしょうが、大きな壁は自分の強くしてくれるチャンスともいえます。
人生においてその経験が生きるということもあると思うのですが、私の印象では大きな壁にぶつかるたびに自分は初心者であり、過去の経験はあまり生きていないようにも感じています。
当然、壁の性質も異なりますし、自分の置かれている環境、家族の状況も異なるので、常に初心者というのも事実だと思います。でも自分がそのように感じるだけで、人は着実に成長しているのでしょうね。
養老さんは、小学生の頃に病気で死にかけたようです。しかし、もともと楽観的な性格が幸いして、同じ病室の隣の子どもが脳腫瘍の手術を受けに行ったきり戻ってこなくても自分は大丈夫だと感じていたそうです。
またそれ以外、人生における危機はいろいろ経験していたということですが、自分の人生を動かしているのは自分ではないということを、かなり幼い頃から感じていたといいます。
私自身もその感覚はあります。必要なときに、必要な場面で、絶妙なタイミングで物事が自分自身に起きるというようなことは誰でも経験するかもしれませんね。これなどは、自分ではない何かが自分の人生を動かしているとも解釈できます。
一方で、自分がそのような出来事を設定しているともいえます。自分ではない何か偉大な意思というのは、実は自分自身の意思であったということです。なかなか信じ切ることはできませんが、そのようなこともあるのではないでしょうか。人生のシナリオは自分で作っているのかもしれませんね。