職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

よい文章を書くための技術

来年も社会人大学院に関する共著を出版します。『なぜ社会人大学院で学ぶのかⅡ』です。

共著の難しいところは執筆者の文章に個性があり、全体の統一感が欠けることです。そこで、少しでもタイトルや内容、表記などに共通性を持たせるために、執筆者と共有した情報を以下に紹介します。主に雑誌プレジデントの「伝わる文章、バカの文章」2024年4月12日号を参照します。

ヤフーのベテラン編集長によると、ひと目で内容を理解してもらえるように、タイトルや小見出しは15文字に収めるそうです。また、漢字・かな・カタカナの3種類が揃っているタイトルの方が目を引くとのこと。たとえば、簡潔に読者の興味を引くタイトルの付け方に次の例があります。

・15文字程度で短く
  「職場環境をより良くするための改善策」⇒「モチベ向上のための職場改善」

・数字を使って具体性を持たせる
  「TOEICスコアの改善」⇒「1ヶ月でTOEIC100点UP」

・問いかけて興味を引く
  「褒められたい人の心理」⇒「なぜ人は褒められたいのか」

書籍のタイトルも近年『なぜ○○は××なのか』といったタイトルが定番になっています。これは、人は問いかけられるとつい答えたくなる心理を利用したものだそうです。実は『なぜ社会人大学院で学ぶのか』という書籍名も、この記事を読んで昨年決めています。

また伝えたい内容はシンプルなのに、文章にするとダラダラと長くなることがあります。短い文章で確実に情報を伝えるために押さえておくべき基本は次の2つだそうです。
①    主語と述語の対応を明確にする
②    一つの要素で一つの文をつくる 

たとえば、次の文は悪文になります。

「人生で大切なことは、自分自身で成し遂げたいことが見つかるかどうかで、たくさんの人に会うことは重要だ。」

この文章では意味が通りません。「人生で大切なこと」という主語が、「見つかるかどうか」と「重要だ」の2つの述語にかかっています。よって、「たくさんの人に会う」という、もう1つの主語が浮いてしまっているのです。よって、以下のように修正します。

「人生で大切なことは、自分自身で成し遂げたいと思うことが見つかるかどうかだ。そのために、たくさんの人に会うことは重要だ。」

たしかに、一文が長くなると、わかりにくいことも多いし、文法的な過ちも誘引するので、どこかで文章をバッサリ切ってみるのもいいかもしれません。

さらに「表記ゆれ」で困るのは、漢字にするかひらがなにするかの問題です。黄金比率は、1つの文章の中で「漢字30%:ひらがな70%」の割合だそうです。リンクの神楽坂編集室の記事は参考になります。

漢字?ひらがな?使い分けに迷ったときの7つのポイント

博士論文を執筆したときは、リンクの「かなで書くか漢字で書くか? 識者の見解一覧」を参照し、一番多く使用されている方を使ってみました。ときには自分の好みで逆の場合もありましたが。

かなで書くか漢字で書くか? 識者の見解一覧

また、「手書きで書く場合、どちらで書くか」という自問自答もよいと思います。たとえば、手書きで書くなら、「勿論」は、明らかに「もちろん」ということになります。

いずれにしても、どのアドバイスも正解があるわけではないので、場数を踏んで馴れるしかありませんね。

最後に、わたしが参考にしている文献をご紹介します。いずれもエッセンスを吸収できていませんが、大いに得るものがありました。

・大西寿男『校正のこころ 増補改訂第二版』(創元社、2021年)
  自分自身が校正者の目線も持って文章を書けるようになります。

本多勝一『新装版 日本語の作文技術』(講談社、2005年)
  すべて実践できれば日本語力は格段に上がりますが、そんなに生易しいことでは
  ありません。

岩淵悦太郎『第三版 悪文』(日本評論社、1979年)
  多くの人が参考にしている古典ですね。