森永卓郎『投資依存症』(フォレスト出版、2024年)を拝読しました。投資で資産を増やせると思っている人にとっては耳が痛い内容です。ポイントは、バブルが崩壊し、資本主義が終わるので、長期分散投資もこれからは意味がないということのようです。もちろん、今までは意味があったことなので、資本主義が終わると確信が持てない人にはメッセージは伝わらないことでしょう。
本書の評価は間違いなく割れると思います。私は読んではいませんが、前作の『書いてはいけない』(フォレスト出版、2024年)であれば、読者は日本政府や日本航空を非難していればよい。前々作の『ザイム真理教』(フォレスト出版、2023年)であれば、財務省を非難していればよい。他人事です。しかし本書は投資依存症の自分自身に対する批判になるので、多くの読者は不愉快になるのかもしれません。
よって評価が割れるか、資本主義を信じて投資をしている多数派の人たちからの低い評価を下されるのではないでしょうか。その点、バブルが崩壊し、資本主義が終わるという森永氏の見解は傾聴に値するし、そのとおりになるかどうかはわからないものの、永遠に資本主義システムが維持できるなど長い歴史から考えればあり得ないことだと思います。
しかし、普通に情報を収集し、過去に積み上げられた知識と経験からするなら、バブルが崩壊し、その後資本主義は終わって株価は戻らないなどという見解に至る人はかなり少数派だと思います。長期分散投資は投資信託をやるときの鉄則だったわけで、そのルールに従うのなら、とにかく我慢して長期保有を維持することになります。
森永氏の意見に対して、そういうこともあるかもしれない、と思える姿勢を取れる人はどれだけいるでしょう。すなわち、資本主義が終わるということを受け入れることができる人は少数派だとすれば、やはりこの本の評価は低いままではないかと思いました。