炭酸ガスの温室効果によって地球温暖化が生じているということに、懐疑的な見解を表明している研究者は多いですが、その中でも元祖的な存在の一人に赤祖父俊一氏がいると思います。アラスカ大学国際北極圏研究センターの所長を長く勤め、オーロラに関する研究ですばらしい業績を残された方です。
赤祖父俊一『正しく知る地球温暖化』(誠文堂新光社、2008年)において、気候学者ではないということを逆手にとって、地球温暖化についても研究結果を示します。彼の結論は、地球温暖化の原因は、人類の活動によって放出された炭酸ガスの温室効果によるものはわずか6分の1程度で、残りの6分の5は「小氷河期」という比較的寒かった1400年から1800年を経て地球が回復中のために気温が上昇していると結論付けます。
現在は、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下「IPCC」)が地球温暖化の原因は炭酸ガスと結論付け、それに政治家や官僚、マスコミが同調している状況です。IPCCは学会ではなく政府間組織で、130各国から2,500名の専門家を集めて気候変動について研究をしています。その2,500名の専門家が一致して、地球温暖化の原因は炭酸ガスであると主張しているところに、懐疑論者として赤祖父氏は切り込むわけです。
どうもIPCCの見解には、政治的な思惑もあるようで、純粋な学問的な探求から結論を出していないのではないかということ。背後には「温暖化商人」のような人々もおり、ここぞとばかりに気候変動を利用したビジネスで一儲けしようという計画もあることでしょう。そのような中、赤祖父氏は、純学問的動機で温暖化の原因を分析した結果が、現在の温暖化は気候変動の一環なだけであり、人類の活動はそれほど影響していないという結論に至ります。このような説は、温室効果を温暖化の原因であると主張する、研究者や政治家、マスコミにはとても不都合なことでしょう。しかし、そのミスリードによって、我々が不要な対策をしているのであれば、それは人類にとって大きな損失になります。
また、赤祖父氏は気候学の専門家ではないご自身が、気候変動について研究する利点を指摘します。まず、気候学の専門家であると、気候学の狭い専門分野に集中して研究しなければ、専門家として認められません。よって、総合的に全体をみることができなくなります。その点、赤祖父氏は研究所の所長として北極圏の研究の全体像をみてきたので、分野を細分化しないで研究ができます。このようなことを総合研究といいます。研究者は、北極圏の研究において、大気、北極海、氷河、永久凍土、植物、動物などの分野に分化された研究を行いますが、赤祖父氏は、それを総合して全体像を把握するわけです。よって、気候学者ができない総合研究ができるという点で、非常に幸運な立場にいたといいます。
一方、IPCCの研究者は、炭酸ガスが温暖化に影響していることに懐疑的な人は招かれることなく、名称は「気候変動に関する政府間パネル」ですが、実態は「炭酸ガスによる温室効果研究グループ」になっているということです。一点集中で結論ありきの研究がなされているということでしょう。それに多くの人が追随しているという今の状況には、問題があるということです。
学問の分野でよくある「専門バカ」というのは、気候変動の研究分野でも起こり得ることで、赤祖父氏の理論展開では、それが明らかになります。「2,500名の専門家 vs. 一人の研究者」という構図ですが、学問の世界では必ずしも多数説が正しいとは限りません。その点、赤祖父氏の主張は非常に興味深いと思います。別の機会により詳細に検証してみたいと思います。