職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

いまだに迷う博士論文の日本語表記

博士論文の執筆も佳境に入り、校正作業も進んでいる。内容はこれ以上深く掘り下げることも、射程を広げることも、自分の実力では難しいかもしれない。おおむね論じ尽くしたといってよいと思う。もちろん、実務家として。もし研究者であれば、まだまだやるべきことはあるのだと思う。

そして、今直面している難題は意外にも日本語表記の問題である。送り仮名表記はどうするか、あるいは、漢字にすべきかひらがなにすべきか、などである。実はこれが厄介で深い。たとえば、自分の場合は、同じ論文の中で表記を統一するためにメモを作っている。送り仮名の付け方については、いくつか例示すると以下のとおり。

・引き続き

・取り込み

・織り込み

・受け入れ

・受け付け

・組み込む

・取り扱う

漢字かひらがなの表記については以下のとおり。

・極めて

・捉え

・及んで

・位置付け

・すべて

・もっとも

・まったく

どれが正しくて、どれが間違っているということでもないので、とにかく自分の同じ論文の中で統一していればよいということだと思っている。そして、送り仮名の付け方については、文化庁の内閣告示・内閣訓令などを参照している。とくに複合の語は迷う。
文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 送り仮名の付け方 | 本文 通則6 (bunka.go.jp)

漢字かひらがなかは、識者の見解を一覧で作成されたサイトがあったので参考にしている。
かなで書くか漢字で書くか? 識者の見解一覧 (shippitsu.xyz)

そして、ちょうど来年3月に出版予定の書籍の校正作業をしていたので、編集担当の大塚和光氏に確認してみた。大塚氏は、青林書院という法学関連の書籍で有名な出版社に長年勤務していた方で、今は保険毎日新聞社でご活躍中の大ベテランである。その大ベテランが、初出に合わせて統一して進めて行ったところで、途中で著者の用法が突然に変わった時、これまで直してきた自信が揺らぐ。直すべきか直さざるべきか、そこが問題だ、と吐露された。

私にしてみれば、なんだかホッとするコメントになる。その道一筋で校正作業をしてきたプロが、結局は迷うということがあるということ。そうであれば、自分が迷って当然である。Nobody is perfect ! であきらめがつくというもの。

書籍も論文もワード原稿で気づかないミスが、ゲラになると気がつくことがある。さらに出版された後に気がつくミスもある。何度も校正したつもりでありながら、本当に「つもり」であったようなことはある。でも最後はこだわらないことが大切かもしれない。Nobody is perfect ! は便利な言葉である。