25年前に J・L・ホイットン=J・フィッシャー『輪廻転生』(人文書院、1989年)を読み、世界観が大きく変わったことを覚えている。トロント大学の精神科主任教授とライターの共著で原題は、"Life Between Life"である。人生と人生の間という意味。今世と前世の間に中間生があり、前世と前前世の間にも中間生がある。もちろんその先にも。
いつものとおり、ホイットン博士が自分の患者である、ポーラという女性に退行催眠を施していた。今世のポーラが19世紀に生きたマーサという女性から、18世紀のマーガレットだった頃を調べようと「あなたがマーサになる前に戻ってください」と指示した。本来であれば「あなたがマーサになる前の人物に戻ってください」というべきところを「マーサになる前に」といってしまったのである。
その結果、どうなったか。ポーラは「空の上にいる」と言い出した。驚き途方に暮れた博士は、空の上で何をしているのかを聞くと「私は生まれるのを待っています。母のすることをみているところです」という。すなわち、前世と前前世の中間地点である中間生にいるときの記憶がよみがえってしまったのである。
この事例を契機に、ホイットン博士は多くの臨床事例を整理し、書籍にまとめたのが、"Life Between Life"である。当時、自分には真実をみつけたと思うほど、影響力を持った書籍であった。
ところがこの数年で、この伝統的な輪廻転生の考えはもう古いということに気がついた。地球における輪廻転生に加えて、他の惑星における転生もわれわれは経験しているのではないかというもの。ニューエイジの概念がもとになっているが、われわれの多くは、スターピープル(starpeople)やスターシード(starseed)であるといわれる。日本ではスターシードのほうが通りがよいようであるが、文字通り宇宙由来の人々ということである。前述の輪廻転生でいうのであれば、中間生のときに別の惑星に生きていて、そこであえて地球を選んで転生してきているようなイメージであろうか。
そして、いったん地球に生まれると、地球の重い波動にとらわれて、なかなか宇宙すなわち地球より遥かに高度な文明とテクノロジーを持つ惑星には戻れず、何度も地球に生まれ変わってしまうことになる。すなわち解脱ができない。しかし、多くの魂はそれを経験したくて地球を選んでいる。地球は相対的に波動が低く、宇宙由来のスターシードにとっては生きにくい惑星のようである。
現実社会に照らしてみると、誰でも経験があると思うが、みんなが宴会やコンパで楽しんでいるとき、自分だけなぜか楽しめないといことがある。あるいは、学生であれば夜更かしして遊ぶのが楽しいという仲間の中にいながら、まったく楽しめないので先に寝てしまうなど経験がないだろうか。また、企業社会のようなピラミッド構造の組織では居心地が悪い、あるいは、部活動の上下のヒエラルキーに対して馴染めないなど。とにかくこの世のルールが快適と感じられない人は多いのではないか。その場合、自分がスターシードなのではないかと考えるとよいことになる。
そうはいっても、左脳過多な自分としては、できるだけ論理的に説明できるものはないのかと探していた。そして、その一つにグレゴリー・サリバン『宇宙人として生きる』(キラジェンヌ、2021年)という書籍に接する機会があった。著者は日本在住のアメリカ人でUFOや地球外生命体に関する専門家。その書籍によるとスターシードは宇宙における経験が豊富な分、地球における生きずらさを感じるという。本の内容は、人の認識や意識レベルで理解できる部分は異なると思うが、宇宙とこの地球の関係や構造を知るのにはユニークな内容かもしれない。
とくに左脳優位の人にとってありがたいのは、情報が氾濫しているこの世界で疑うべき情報の見分け方を示唆していること。かなりはっきりと明示しているので、せっかく意識改革できた人でも、ミスリードされて適切な方向へ進めていないのではないかというときには、有用な方向性を示してくれる。
たとえば、今の混沌とした時期に、どうしても自分の外側に救世主を求めがちである。そして、偽ヒーローのパターンは、突然現れて目を引く、不正な情報を流して拡散する、無責任な行動を極め、ダメージを片付けることなく消えるので、それを見抜く必要があるという。また、若者の文化やメディアには、意図的にネガティブな意識が入り込んでおり、映画、音楽、ファッションなどにも注意喚起をしている。
しかし、基本的に世界を支配する古いシステムはすでに消えかけており、私たちがみえているのは過去の宇宙のテンプレートが現実世界に転写されているだけなので、世界は着実に新しい明るい時代に移行しているというポジティブな点が強調される。そして、CIAなどの暗躍によって、情報操作はますます巧妙になっているので、より宇宙的なつながりによる直感を鍛えて未来を確信に満ちたものにする必要があるとする。情報に振り回されるだけの人間をやめる、しっかりと高次元からの情報を受け取るということであろう。
以上のように伝統的な輪廻転生に宇宙次元の視点を加えると、はるかに異なる視覚を獲得できることになる。宗教は人間が創作した概念であり、本来知るべき真実が隠されていると考えると、われわれが宇宙由来の人類であるという考えによって、古い概念から解放されることは多い。実利的にも私たちの生き方が楽になるのではないかと思った。