職人的生き方の時代

自分だけの生態学的ニッチで生きる

予防接種と自閉症に関する認識の違い

ある著名な憲法学者のA氏の「表現の自由」に関する論文を読んでいて、興味深いくだりに接した。フェイク・ニュースと表現の自由についての論文であるが、その憲法学者のA氏がフェイク・ニュースの一例として、予防接種と自閉症の関係について指摘し、それが虚偽の表現あるいはフェイク・ニュースという前提で論述が展開されていく。

もちろん、論文の主題は表現の自由であり、予防接種と自閉症の因果関係の議論はあくまでも事例にすぎない。当該論文のテーマは、虚偽の表現が、表現の自由のもとに保護される価値があるのかということであり、予防接種と自閉症の因果関係の解明ではないが、事例として次のような流れで紹介されている。

予防接種が自閉症の増加の原因となっているという論文が、アメリカの医学雑誌に掲載されて以降、予防接種の危険性を確信する人が増加し、子どもに予防接種を受けさせない保護者が増加した。この論文は、その後方法論に問題があったということで撤回され、医学界の支配的な立場では虚偽の表現となっているとする。

そして、A氏の表現の自由に関する憲法学的見解は、医学界で常識とされてきたものが、その後医学の発展で覆されたという事例は少なくないので、現時点で間違いなく虚偽だと思われたとしても表現そのものは禁止すべきではない、ということになっており、その点では妥当な結論となっている。

A社は、この論文の展開を筋の通ったものにするため、予防接種と自閉症に因果関係があるという説は「虚偽」であるという前提を置いているだけである。よって、憲法学における表現の自由についての論文としては問題ないし、そもそも予防接種と自閉症の因果関係は論点ではない。

しかし、仮に憲法学の議論とは別に予防接種と自閉症に因果関係について興味をもった場合、私が調べるだけでもそれなりに論文が出てくることに気がつく。入手が容易な書籍で、医学が専門ではない人向けに、400本以上の論文を要約した、Neil Z. Miller, Miller's Review of Critical Vaccine Studies (2016) でも複数の論文が紹介されている。予防接種と自閉症の因果関係を論じた論文は複数存在し、自閉症に限らず予防接種が様々な病気を引き起こすという論文は多い。また、これも入手が容易であるが、Suzanne Humphries & Roman Bystrianyk, Dissolving Illusions (2013)では、今世紀に入り、公衆衛生や栄養の改善によって多くの感染症は1950年頃までに激減しているにもかかわらず、その後、多くのワクチンが強制されていることを各種データや文献の引用で論証している。それによると、ワクチンは「遅れてやってきた援軍」どころか「遅れてやってきた偽の援軍(敵軍)」だったということになる。

ここで、憲法学者のA氏が、これらの医学論文や文献を調べなかったことを非難するためにこのような例を紹介したのではない。ここでの論点は、どんなに優秀な研究者でも、自分が見えている世界しか認識できないし、興味がない分野あるいは自分にとって必要がないと思う分野にまで情報を取りに行くことはないということである。よって、至極当然のことであるが、自分の知らない世界のことは認識しようがないということ。

あまりにも当然過ぎる道理であるが、このような事実に対して、私たちがとり得る態度がある。それは、単純であるが自分の知らない世界があるということを頭の片隅に置いておくこと。つまり、答えは一つしかないなどと考えないことである。おそらく100人いれば100通りの真実があるくらいの態度が必要なのではないだろうか。

また今、ワクチン推進派とワクチン懐疑派の人たちが日々情報に接するが、目にした情報を脳で処理するときに、それぞれ自動的に取捨選択しているであろうということ。たとえば、ワクチン懐疑派の人には、10月以降情報の質や内容が変わってきていることを感じることができると思うが、ワクチン推進派の人には、その情報が目に入っても、自分にとって不要なもの、確率的に自分とは関係ないものとして処理されている思われる。だから情報に肯定的なものと否定的なものがあっても、自分も含めて結論に合わせてあらかじめ情報処理してしまっているのだと思う。よって、議論は平行線をたどることになる。

最後に、本間真二郎『新型コロナワクチンよりも大切なこと』(講談社ビーシー、2021年)で紹介されていたワクチンに関する興味深い論文 James Lyons-Weiler & Paul Thomas, Relative Incidence of Office Visits and Cumulative Rates of Billed Diagnoses Along the Axis of Vaccination, International Journal of Environmental Research and Public Health (2020) があったのリンクで紹介しておく(無料で購読可能)。

IJERPH | Free Full-Text | Relative Incidence of Office Visits and Cumulative Rates of Billed Diagnoses Along the Axis of Vaccination | HTML (mdpi.com)

10年以上の期間で、ある小児病院の患者でワクチンを接種していない561名の子どものうち、注意欠如・多動症ADHD)の患者は0名であったのに対し、ワクチンを接種した2,763名の子どもでは5.3%もいた。また、その他アレルギー、喘息、湿疹、結膜炎などの症状が顕著に増加しているとする。これらのデータに基づくと、製薬業界から独立した研究機関においてさらなる研究が望まれるとする。

しかし、このような情報に接しても、人は自分の脳で情報を取捨選択してしまうので、結局、自分で調べる人と素通りする人が出てきてしまうことになる。きっと今は、人によって見えている世界は大いに異なることが推察できる。何か悪い夢でもみているのではないかと思う人と、過去とそれほど変わらないと見えている人。同じ空間に生きていながら、別世界に生きているのが私たちなのかもしれない。

以上の論点から感じることは、自分が認識していない世界が存在し、わからないことが山ほどあるという事実。そして、わからないことには「わからない」と整理するスペースを自分の中に持っておきたいということかもしれない。