スペシャリストの生き方

自分だけの生態学的ニッチで生きる

英語という「弱み」が「強み」になるとき

ビジネスの世界においてパワーポイントで資料を作成することが増えている。通例は短い文章を箇条書きにしたり、図表を多用したりすることで読み手の理解を容易にする技術が使われる。そこで、プレゼン資料をパワーポイントで作る機会があれば、和英二か国語で作成してみることをお薦めする。

筆者の場合、あるプロジェクトの推進において、本格的に動き出したら海外の専門家の支援を得たいと思っていることもあり、最初から二か国語で資料を作成することがある。その経験をもとにアドバイスするなら、日本語が先か英語が先かと問われれば、間違いなく英語を先に作成すべきことを提案したい。答えは簡単で、筆者の場合であれば日本語の文章技術に比べれば英語の文章技術のほうがはるかに劣っているからである。なぜ劣っている英語を先に作成するのかというと、日本語の文章と異なり、複雑な凝った文章が書けないからというのが理由になる。箇条書きにする場合の文章は極力シンプルであるほうが読み手を飽きさせることがなく親切である。一つの文章は長くても二行までで、望ましくは一行でまとめるほうがよい。結果的に英語を先に作ったプレゼン資料は簡潔でよいものになる。まさしく英語という「弱み」が「強み」に変わるときである。資料の重要な箇所にしるしをつけるときに使う付箋は、接着力の弱いノリを開発して失敗した3M社が、ノリとしてではなく付箋の接着部分に利用して成功した例があるが、まさしくこれと同じような偶然の発見であった。

また、日本人は英語でのプレゼンは得意ではないのは事実である。どうしても文と文を次々とつなげて文章を作り話すことが苦手である。学校教育では文と文をつなげる表現を多く学ばなかったのであろうか。たとえば、But then again(とはいうものの)、In any event(いずれにしても)、Meanwhile(話は変わって)、That said(そうはいっても)など、プレゼンのときにも使える表現であるが、なぜか口から出てこないものである。その点、プレゼン資料があらかじめ箇条書きになっていれば、英語が苦手な人でも順番に話していけ、あらかじめ、使う予定の接続詞も準備できるので便利である。結局、短いシンプルな英語表現は英語のプレゼンのときにも有効に機能するのである。

筆者の場合、アジア太平洋地域の社内会議に定期的に参加しなければならない時期があった。当然、同僚の中でオーストラリア人の英語が一番である。母語なので当然だ。次がシンガポール人、マレーシア人、香港人が上手である。彼らの中にはイギリスやアメリカの大学を卒業した人も多い。また、韓国人の英語のアクセントは強いが英語学習に力が入っている国なので、それなりにうまい。一方、日本人の筆者が一番下手なグループに入るわけであるが、同じ下手なグループに入るタイ人や台湾人の同僚とつるんで会話で盛り上がろうとしても、今度は彼らのアクセントが強くて理解できない。Excuse me? も Could you say that again? も2回まで許されるが、3回目になると聞けないので、分かったふりをして聞き流す。日本人的な謙虚さがこんなところにも出てくる。でもその謙虚さから、「おそらく害のある人間ではないのではないか、、、」という印象を持たれ、上司からも信頼されることになり、同僚からも近づきやすいやつと思われることになる。必死で実力以上のものがあるように装い、自分をアピールすることが苦手な日本人は、静かに実績を積み上げて他者からの信頼も得ていけばよいであろう。

英語が下手で寡黙な日本人が、人知れず業績を伸ばす姿は、どんな国の人も陰でサポートしたくなるものと思う。これも「弱み」が「強み」に変わるときなのかもしれない。