スペシャリストのすすめ

自分だけの生態学的ニッチで生きる

温暖化ムラに群がる科学者と「温暖化商人」

気候変動に関する政府間パネル(Intergovermental Panel on Climate Change、以下「IPCC」)や国連、先進国のリーダーたちは、必死に地球温暖化を材料にして、二酸化炭素削減を主張します。あまりにも科学的データとの乖離のある発言の裏には、何か儲け話があるのだろうと勘繰ってしまいたくなります。私にはそのカラクリや儲けの構造まで深く理解することはできませんが、少なくとも次の世代に大きな負債を残すことはわかるので、どうしても彼らの意見に賛同することができません。調べれば調べるほど、研究者の赤祖父俊一氏がいう、金儲けに狂う「温暖化商人」や、それを理論的サポートしようとする科学者の存在が浮き彫りになってしまいます。

2013年に出されたIPCCの第5次報告書は、二酸化炭素による気温上昇は、今後100年で4℃となっていますが、最近の観測に基づく気候感度の見積もりはずっと小さな値になっているそうです。その辺の詳細な分析は、深井有『地球はもう温暖化していない』(平凡社新書、2015年)に詳しく述べられていますが、もし気候感度が報告書の値の2分の1であれば、気温上昇は2℃程度となってしまいます。

仮定した気候感度が大きすぎるという欠陥を認識していながら、それによる予測をもとに報告書を作り上げてしまったということは、人為的に温暖化を強調するためにでっちあげられた報告書ということになります。専門家が読めばバレるようなことでも、報告書として出してしまうのは、何か焦りでもあるのかもしれません。

IPCCの使った気候モデルでは、水蒸気や雲の取扱いに課題があり、そもそもモデルに組み込むことが困難だということです。だから適当なデータを入力せざるを得ず、現実と乖離した結果が出てしまったということでしょう。

その後、心ある科学者から膨大な気球観測データを解析した論文も出されて、IPCCの報告書の矛盾が指摘されることになるのですが、そのような論文は発表されるまで妨害にあったり、発表された後もその論文を否定しようとする論文が多く出されるようなことが生じています。とにかくIPCCの報告書を信奉する研究者は、なりふり構わず温暖化懐疑論者を攻撃しまくります。もうそれは科学とは呼べない領域まで踏み込んでしまっていることになります。

温暖化信奉論者の主張はもう科学ではないという点では、アル・ゴアの映画で、北極海の氷が消えて、行き場を失ったシロクマが吠えている映像も、それはすでにイメージ戦略、あるいはマーケティング戦略といえるものかもしれません。専門家の分析によると、海氷が減っているのは気温上昇が要因ではなく、海流の変化によるもで、実際に南極では海氷が増え続けているということです。さらに、北極でも2013年からは海氷面積が増加に転じているということです。

結局、IPCCは、温室効果ガスによる地球温暖化を前提に作られた組織なので、科学的根拠について中立的ではあり得ません。「先に結論ありき」で、無理な操作を繰り返すことで報告書の辻褄が合わなくなっているということです。

地球物理学が専門の深井氏が強調するのは、大気中の二酸化炭素のために、今後100年で問題にするほど温暖化することはなく、それ自体は害をもたらすことはないといいます。考えてみれば、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収し酸素を出しており、その植物を人類が食料とするわけですから、二酸化炭素だけが悪者になり、削減の対象となるのも不思議なものです。小学生でも習うことではないでしょうか。

そして、原子力発電に群がる原子力ムラと同じく、温暖化対策の予算の周りには、温暖化ムラができあがっているといいます。この予算の源泉は庶民が支払った税金であることを忘れてはいけません。そして、政・官・学・産を巻き込んだ利権集団を何としても解体しなければといいます。

深井氏は、70代半ばを過ぎて、戦時中のころを思い出すそうです。どうやら雰囲気が当時と似ているからということ。先の見えない閉塞感の中、「地球温暖化防止」という大義のもと人々が二酸化炭素削減に励んでいる様は、アジアから鬼畜米英を追放して大東亜共栄圏を構築するのだという国民的熱狂と同じ雰囲気を感じるようです。世の中がある方向に向かって一斉に流れるときこそ、立ち止まって冷静に考えることが必要なのでしょう。

利益優先が主義つくり出す「しょう油もどき」

日本の食文化で世界に誇れる発酵食品がありますね。私も味噌としょう油は毎日のように口にしていると思います。そのしょう油について、市場経済を勝ち抜くためには、いろいろな工夫がなされていることを知りました。

安部司『食品の裏側』(東洋経済新報社、2005年)は、現時点で37刷というロングセラーということですが、なかなか考えさせられる記述がいっぱいありました。その中の一つに、私が毎日使っているしょう油の話があり、日本の食品業界についてがっかりさせられた内容がありました。

昔ながらのしょう油の原料は、大豆と小麦、塩、麹です。麹からつくられた酵素が、大豆や小麦のたんぱく質アミノ酸に、でんぷんを糖分に変えます。これがしょう油のうまみの素になります。この「うまみ」は実に多様で、甘みもあれば酸味もあり、こうばしい香りも出るということで、化学の力では解析できない味が醸し出されるといいます。この味を出すには、手もかかれば時間もかかるわけで、出来上がりまで1年は必要とのことです。

これをもっと早く、コストをかけずにできないか、ということで代替品の開発がはじまったということです。しょう油のうまみの素はアミノ酸ですが、このアミノ酸を時間をかけて発酵させなくても、大豆などのタンパク質を塩酸で分解することで、簡単につくることができます。こうして出来上がったアミノ酸が安価なしょう油のベースになりますが、これにはしょう油らしい味も香りも色もないそうです。

ところが、これをいかにも本物らしく仕立て上げるのが食品添加物の力になります。まず、グルタミン酸ナトリウム化学調味料)」でうまみを出し、「甘味料」で甘みをつける。酸味を出すためには「酸味料」も入れます。「増粘多糖類」を数種入れて、コクのととろみを出し、さらに色は「カラメル色素」で着色して、香りづけのために本物のしょう油を少し足します。とどめに、日持ちが悪いの「保存料」もというわけです。これが安価な「しょうゆ風味調味料」の出来上がりです。

このしょうゆ風味調味料は、昔ながらの本物のしょう油を「丸大豆しょう油」というのに対して、「新式醸造しょう油」などと称して売られているそうです。この二つの違いは、ラベルを確認すればわかります。丸大豆しょう油の原料は「大豆、小麦、塩」のみで、添加物はありません。一方、新式醸造しょう油は添加物がいっぱいで並んでいます。これはもうしょう油ではなく、「しょう油もどき」ですね。

最近では、有機大豆や小麦、遺伝子組換えではない大豆、小麦などにも気を遣う必要もあるでしょう。冷静に考えると、昔に比べて花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギー性疾患が増えているのは当然なのかもしれません。日本の伝統食品をも化学の力で破壊してしまう、利益優先主義がはびこっているのですから。

私たち消費者ができることは、いくら安くてもそのような商品は購入せず、人の健康を害してまでも利益を追求する企業に対して距離を置くということなのかもしれません。

クライメートゲート事件から考える科学者像

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下「IPCC」)は国連機関の一つで、その報告書は世界中の2,000名を超える専門家が協力して数年かけて厳密な検証を経て作成されます。だから誤りなどあるわけがないと誰もが思うことでしょう。いや誤りなどあってはならないと。

しかしながら、IPCCが「人間活動による気候変動がもたらす危険性を評価する」という目的で設立されて以来、それに科学的根拠を与えることを使命とされた専門家によって、次第に「科学」よりは「大義」に重きをおくようになったそうです。そのように分析するのは、深井有氏で、『地球はもう温暖化していない』(平凡社新書、2015年)にも解説されています。

IPCCの報告書については、二酸化炭素による温暖化の主張に合うように観測データを改ざんしているのではないかとか、IPCCの主張に合わない論文の発表を妨害したのではないか等々、年を追うごとに多くの疑惑をもたれてきました。そして、2009年11月19日、それらの陰湿な隠ぺい工作のすべてが白日の下にさらされます。それは、IPCCの「科学」のまとめ役であった、イギリスのイーストアングリア大学気候研究所のコンピューターから1,000通以上のメール記録が流出して、世界中に広がりました。のちに「クライメートゲート事件」と呼ばれるようになる出来事です。

このメール記録を流出させた人は、IPCCの専門家のやり方に我慢ができなかったのか、3回にわたってメール記録を曝露しています。いわゆる、ClaimateGate 1.0、ClaimateGate 2.0、そして、ClaimateGate 3.0です。その内容は、オーストラリアの研究者によってまとめられています。詳しく知りたい方は、John Costella, The Claimtegate Emails, The Lavoisier Group (2010)を参照してください。メールの原文も確認できるようにリンクが貼られていますので、詳しく読みたい方は以下のリンクにあるブックレットを確認してみるとよいでしょう。

The Climategate Emails (lavoisier.com.au)

いくつかのメールのやり取りを読むと、事実を捻じ曲げたり、データを隠したり、都合のいいように見せ方を工夫したり、科学者というのはこんなことをするんだ、というのがわかります。これが真実だとするなら、科学者は簡単にお金のためか、名誉のためか、何が目的かわかりませんが、透明性がある公正な議論を常に心がけることはないのかと思ってしまいます。この人たちは政治家やビジネスマンではなくて科学者です。もちろん、これらのメールが真実であるならという前提ですが。

しかしそれこそ、これらの膨大なメールを創作することに何のメリットもないでしょうから、科学者本人たちがやり取りした内容なのでしょう。たとえば、以下のような表現がみられますが、みなさんにとって科学者に対する考えが変わりますでしょうか? 英文が長く余計な内容も含まれるので、前後の文脈は省きますが、原文を確認したい方は、前述のリンクを参照してください。

1999年11月16日
"to hide the decline."
これは気温が低下しているデータを隠すということを示唆しています。

2004年8月6日
"We did this to stop getting hassled by the skeptics for the datasets. "
データの見せ方について、温暖化懐疑論者にデータについて煩わされないように、うまくやった、ということを示唆しています。

2005年2月2日
"I think I’ll delete the file rather than send it to anyone."
誰に見られているかわからないし、情報公開法によって情報開示されないようにファイルを削除するように示唆しています。

このクライメートゲート事件は、その後、各種機関の調査を経て、報告書の作成に不正はなかったという結論になっています。しかし「火のないところに煙は立たぬ」ではありませんが、これらのメールのやり取りから不正が推察できるのは事実だと思います。本来であれば、報告書の作成メンバーは、日ごろか注意深く発言し、メールにも気を遣うはずですが、公にならない前提で本音が出たのではないでしょうか。パンデミックのときもそうでしたが、ノーベル賞受賞者の発言でも、本当に科学者なのかと思える稚拙なコメントもみられました。おそらく、私たちが本物の科学者を見分ける眼力を必要としているのだと思います。

プーチン大統領の演説を通して視る世界観

9月30日に行われた、ロシアのプーチン大統領の演説の翻訳に接しました。東京都市大学名誉教授の青山貞一氏によるものですが、次のリンクは非常に興味深い内容でした。
プーチン大統領演説 2022年9月30日 全文日本語訳速報    kp.ru     ロシア語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授) (eritokyo.jp)

考えてみると私たちが入手できる情報のほとんどは、西側諸国のフィルターを通したものでしかなく、なかなかロシアの国のように政治的にも文化的にも距離のある国の人々の考え方を深く理解することができません。そういう意味では、ここに示された和訳は貴重な資料なので、時間のある時にじっくりと読んでみるとよいと思いました。

一部のみですが、なるほどと思える部分を以下に引用します。演説の中ほどに次の発言がみられます。

「欧米諸国は何世紀にもわたって、自分たちは他国に自由と民主主義の両方をもたらすと言い続けてきた。民主主義の代わりに抑圧と搾取、自由の代わりに奴隷と暴力である。一極集中の世界秩序全体は、本質的に反民主的で自由がなく、徹頭徹尾嘘であり偽善者である。

アメリカは世界で唯一、核兵器を2回使用し、日本の広島と長崎を壊滅させた国である。ちなみに、前例がある。

第二次世界大戦中、アメリカはイギリスとともに、ドレスデンハンブルク、ケルン、その他多くのドイツの都市を、軍事的必要性もないのに廃墟にしたことを思い出してほしい。そしてそれは、軍事的な必要性もなく、実証的に行われたのだ。目的はただ一つ、日本への原爆投下と同じように、自国と世界を威嚇することであった。

米国は、野蛮な「絨毯爆撃」、ナパームや化学兵器によって、韓国とベトナムの人々の記憶にひどい傷跡を残した。

今日に至るまで、ドイツ、日本、大韓民国などを占領し、対等な同盟国だと皮肉っている。聞け!どんな同盟なんだろう。これらの国の指導者がスパイされ、国家元首がオフィスだけでなく自宅まで盗聴されていることは全世界が知っている。本当に残念なことだ。それをする人も、奴隷のように黙ってこの野暮ったさを飲み込んでいる人も、恥ずかしくなる。」

たしかに、プーチン大統領のいっていることは事実なのでしょう。西側の指導者は、この点についてどのように弁明するのでしょうか。それ以上に重要な点は、多くの人々がプーチンのこれらの演説に耳を貸さないであろうということです。西側が貼った「悪党」というプーチンに対するレッテルに、一ミリも疑うことなく、この演説の真意は素通りされることでしょう。

私も含めて多くの人々は、大手のマスメディア、あるいはインターネットにおけるオルタナティブ・メディアを通して、とにかく自分の見えている情報がすべてであり、全体であると思い込みます。本当は、自分の見えている世界が全体なのか、部分なのか誰もわからないはずです。仮に一部分だと理解していても、それが全体のどこの部分なのか把握するのは非常に困難なほど、情報が氾濫しています。理詰めて徹底的に調べても何が正しいかなど、そう簡単にわかるものではありませんが、人は意外にどれが正しいかの価値判断をしがちではないでしょうか。

戦争を正当化する気持ちは微塵もありませんが、ウクライナが正義か、ロシアが正義かなどわかるわけがないと思います。そもそも、日ごろ夫婦喧嘩や親子喧嘩をしている私に、何かいえる資格もありません。また、私の浅薄な知識とつたない分析で出せる答えはないと断言してよいと思います。ある意味で、「わからない」というのが答えです。その点を踏まえて、もう一度プーチンの演説を読み直してみたいと思います。

地球温暖化説に利用された「ホッケースティック曲線」

以前、地球温暖化説はある一定の結論に誘導する目的があるのではないかということを書きました。本当は人類の活動が気候変動に大きな影響を与えていないにもかかわらず、あたかも人間活動のために地球温暖化が進行中であるという印象を人々に植え付けている人々がいるということを。

地球温暖化説に煽られず踏みとどまる - スペシャリストのすすめ (specialistbiz.jp)

地球温暖化説の根拠となっているのは、

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下「IPCC」)の報告書になります。IPCCは、まず二酸化炭素濃度が増えはじめた150年前からの気温変化を再現できる気候モデルをスーパーコンピュータの中に構築し、それを使って今後の気候を予想しようとしています。これが、『地球はもう温暖化していない』(平凡社新書、2015年)を著した深井有博士によると、多くの誤りを含んでいるということです。単なる誤りだけならまだしも、むしろ結論を地球温暖化説に誘導する研究不正すら存在しているのではないかということを指摘します。

たとえば、深井氏の指摘によると、IPCCの第3次報告書でいわゆるホッケースティックといわれる気温上昇の理論は誤りを含んでいるといいます。スティックを横にして置くと、先に行くほどスティックの先は急激に上に向かいますが、気温上昇を象徴する呼び名として使われています。この気温上昇の根拠は、シベリアの樹木の年輪幅からアメリカの研究者がグラフを作成していますが、このグラフの中には中世温暖期も小氷河期もなく、1000年から1800年の間、平均気温はほとんど変化せず、突如、産業革命後の二酸化炭素濃度の増加に伴って気温が上昇したと説明されています。

このグラフを作成したアメリカの研究者は、当時学位をとって間もない若者で、この非常識なグラフは古気候学の専門家からは相手にされなかったそうです。しかし、これがIPCCの目に留まって、広く受け入れられるようになっています。しかしその後、アメリカの科学アカデミーは、このグラフの精査をしていますが、結果的にはグラフは誤りであることが判明しています。その後、その研究者は訂正版を出すものの、専門家には相手にされていないようです。

ホッケースティック曲線の論拠を失ったIPCCは、その後人為的活動が温暖化に寄与していることを示す理論作りに苦労しています。とにかく現実に生じている事象とICPPの報告の間には乖離が生じており、今は必至にその理論的裏付けを探しているところなのでしょう。

私たち一般人はそのような背景を知ることが難しい状況にありますので、著名人や政治家、研究者が、「私たち人間の活動が地球温暖化をもたらしている」ともっともらしく断言されると、それを信じてしまいます。最近注目されるイギリスのチャールズ3世国王もその一人でしょう。しかし、複数の情報源や入手できる文献を参照して、自分自身でその真偽を確かめることは大切だと思います。

自分自身について懸念することは、自分も誤った仮説に加担して、人類に大きな損害をもたらしている一人なのではないかということ。あるいは知らない間に地球温暖化理論を活用して金儲けをしている温暖化商人に利得の機会を与えているだけではないかということです。できる範囲で調べて裏付けをとる努力を怠ると、自分だけでなく多くの人が損失を被ることになります。地球にとっても人類にとってもいいことなどありません。温暖化対策や代替エネルギーのビジネスに、本当に効果的で世の中に貢献できているものがどれだけあるのかということも、まだ誰にもわからないのだと思います。

このテーマは奥が深そうです。また別の機会に考えを整理したいと思います。

16時間の空腹を確保する朝だけ断食

一日二食の生活を続けて10年以上経過しますが、体調は良く健康診断でも指摘事項はありません。10年前に比べると最近は、朝抜き断食や空腹の時間を16時間確保するなどの書籍が目につくようになりました。私が最近読んだだけでも、三浦直樹『"空腹"が健康をつくる』(ナツメ社、2020年)や青木厚『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム、2019年)、鶴見隆史『朝だけ断食で9割の不調が消える』(学研プラス、2015年)などがあります。

共通していえそうなことは、一日二食は食べすぎであり、江戸時代あたりまでは一日二食が普通であったということ。三食だと常に胃腸も含めた内臓が働き続けていることになり、休む暇がなく胃腸が疲弊すること。断食により腸内フローラが整い、免疫機能も活性化すること。10時間の空腹で脂肪が分解されはじめ、16時間でオートファジーが機能しはじめ、古い細胞が新しい細胞に生まれ変わること、などです。

このように、断食に関する多くの書籍が出版され、一般の人が実践しはじめると、食品業界の市場は量的に縮小してしまうのではないかと思います。これからの食品業界は質的に市場拡大することを志向する必要があるようです。そのような流れに抗するかのように、一日三食摂らなければいけない、という強迫じみた専門家の意見も出てくるわけです。しかし、断食によって健康を回復した事例や、難病が完治した事例など、枚挙に暇がないことを考えると、一食抜くぐらい実践して私たち一人ひとりが人体実験をして結果を検証してみたらいいのです。誰にも迷惑をかけるわけでもありませんし。

私が初めて断食を日常生活に取り入れてみる価値があるのではないかと思わせてくれたのが、甲田光雄『奇跡が起こる半日断食』(マキノ出版、2001年)に接したときです。甲田医師は半日断食の提唱者の中でも重鎮といってもいい方かと思いますが、多くの実績を残して、断食の効用について世の中に広めた第一人者だと思います。

一日三食でなければいけないという説にも丁寧に反論しています。現代の栄養学は、朝食を抜くとブドウ糖が不足し、脳の機能が低下するという理由で、朝食抜きに反対しています。そのエビデンスとして朝食を抜いている学生は成績が悪いという報告もされています。

甲田医師はこの点について、机上の空論に過ぎないと断言します。満腹と空腹のときと比べて、仕事や勉強の能率が上がるのはどちらかというと空腹のときです。お昼を食べた後に、頭がボーとして仕事がはかどらないという経験は誰でもしていると思います。空腹によってむしろ脳の働きが低下するどころか、かえって頭が冴えわたってきます。これはどういうことかというと、普通に食事をとっていると、脳はブドウ糖のみをエネルギー源として使いますが、食事を抜くと脳は別途、ケトン体をエネルギー源として切り替えるそうです。

このケトン体というのは、脂肪が分解されてできる物質ですが、断食をすると体内の糖分が尽きるので、脳は体内に蓄えた脂肪をエネルギー源として使うようになるのです。ケトン体をエネルギー源とした脳は、脳波の一つであるα波を増やし、脳下垂体からはβ-エンドルフィンという物質の分泌量が増えます。α波はリラックスの脳波で、β-エンドルフィンは快感物質といわれています。これらが増えることによってさわやかな気分になり、心が平穏になり、リラックスできるわけです。

宗教では心身の浄化のために断食を行いますが、それはこのような仕組みを経験的に知っているから取り入れているのかもしれません。心身の浄化のみならず体内の浄化にも有効な朝抜き断食であれば、誰でも手軽に取り組むことができると思います。最初は慣れるまでつらいと思うこともあるかもしれませんが、無理のない範囲でやってみる価値はあると思います。書籍などを通して頭で理解したことを、実践して体で感じることで、より深く断食の本質を理解できるようになると思います。

小麦に含まれる「グルテン」が問題である理由

最近、小麦の弊害について解説する書籍が増えています。今まで小麦を食べることで健康を害することがわからなかったのか、わかっていても一般書籍として出版することが難しかったのかどちらなのかと思うことがあります。

書籍も医師が書いたものが多く、学術論文を参照して記述しているので、学術の世界では以前から小麦の弊害は知られていたのでしょう。もしこれらの指摘について正しいと思う人が増えて、小麦を含んだパンやパスタ、うどん、カレーなどを食べる人が少なくなると、食品業界は大打撃を受けることでしょう。ただ、そのことに気づいて実践する人は少数派だとは思いますので、食品業界にそれほどの危機感はないと思いますが。

たとえば、内山葉子『パンと牛乳は今すぐやめなさい!』(マキノ出版、2017年)によると、臨床経験からパンを食べるのをやめると、疲れ、肥満、腸トラブル、うつ、湿疹なが改善するといいます。牛乳の弊害と合わせて説明する本書では、多くの論文を参照しつつ、その理由を解説します。簡単にいうと、パンと牛乳を摂取すると腸内に未消化物が増えるため、その受け皿として内臓脂肪が増えてしまい、体のあちこちで炎症を起こすといことです。

そして、その原因物質が小麦に含まれるたんぱく質グルテンになります。グルテンは人体に害となる多くの作用を持っており、中毒症状を引き起こすとされます。よって、パンを食べると、またパンを食べたくなり、やめられなくなります。一方、パンのフワフワ感やモチモチ感、うどんのコシもグルテンによって生まれるので、消費者に好まれるための重要な役割があります。

しかし、このグルテンは、長年の小麦の品種改良などによって、ますます私たちが持っている消化酵素では消化しにくいものへと変化しているそうです。体内で未消化物として残るものは、我々の免疫システムが異物と判断して攻撃する抗体を作ってしまうことになります。これが小麦アレルギーを起こす原因になります。

また、本間良子『長生きしたけりゃ小麦は食べるな』(アスコム、2020年)という過激なタイトルの書籍によると、小麦をたくさん食べると腸にカビの一種であるカンジダが増殖するといいます。そして、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが乱れ、免疫機能が働き、増殖してしまったカンジタを激しく攻撃するようになります。その結果、腸内の粘膜まで傷つけてしまうといことです。

腸の粘膜の細胞が傷ついて炎症を起こし、その細胞に隙間ができることで、腸壁にごく微細な穴があくことになります。そこから、腸内にいる細菌や毒素、未消化の食べ物などがもれ出て全身にめぐるようになり、様々な不調を引き起こすことになります。これがいわゆる「リーキーガット症候群(腸もれ症候群)」です。この腸もれを治すために、小麦を食べることをやめて、腸にあいた穴を塞ぎ炎症を抑える必要があるわけです。

さらに、最近出版された福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社、2022年)でも小麦は消化されるとエクソルフィンというモルヒネに似た構造式の成分が生成され、脳にあるモルヒネの受容体と結合することで依存症が生じると指摘します。これが小麦をやめたくてもやめられない厄介な仕組みなのかもしれません。アルコールや大麻、ニコチンの同じなのでしょう。

福島医師は胃腸科の専門ですが、寿司を食べた5時間後に内視鏡で胃の中の様子をみると、寿司ネタは消化されているのに、お米は残っているそうです。パンやお米のような炭水化物は消化が悪く、肉や魚のようなタンパク質は消化が良いということがわかっています。

そして、その理由は、700万年の人類の歴史の中で、我々が農耕をはじめたのは1万年前とすると、699万年は穀物を大量に食べることはなかったわけです。それまでは、狩猟によって肉や魚、あるいは木の実やクルミ、ナッツなどを食べていたのでしょう。福島医師の指摘から冷静に考えると、私たちの体は大量に炭水化物を摂取するようにはできていないのかもしれません。

そして、これらの書籍に接してから、自分自身が1ヵ月ほど小麦を食べないようにしてみました。たしかに、体は軽くなり、皮膚の炎症など解消されているようです。皮膚の炎症に悩んでいた娘も2週間小麦を絶った時点で、かなり症状が改善されてきました。人体実験としてはかなり成果を実感できます。

あらゆる病気の犯人を小麦に押し付けるのは酷ですが、グルテンと様々な病気に因果関係があるのであれば、私たちはグルテンフリーの食材を選ぶ努力をしていくとよいと思います。すでにヨーロッパでは、かなりグルテンフリーのパンやパスタが普及していて、スーパーでも手軽に入手できます。これは消費者が市場を変えたという実例です。日本は値段を優先して、添加物など気にせずに食材を選ぶ傾向がありますが、せっかくお金にはエネルギーがあるのですから、より良いものにお金、すなわちエネルギーを使うことで、食品業界に働きかけていくことも大切だと思います。